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令和元年にあらためて思う、日本人は元号が好きだ

加藤 徹 加藤 徹 明治大学 法学部 教授

元号を考えることは、己を知るきっかけになる

服部 俊宏 誤解がないようにいうと、使い分けが巧みな日本人の暗黙知が優れているということではありません。暗黙知は、それぞれの民族や地域にあります。重要なのは、その多様性を知ることで己を知り、己を相対化する目を養うことです。

 天皇が代わり、令和に改元されたという、非常に日本的な出来事は、そうしたことを考える良いきっかけになると思います。

 中国は皇帝制だったのに、なぜ日本では、摂関家も武家政権も天皇の地位を奪わなかったのか。元号を始めた中国がすでに元号を廃止したのに、なぜ日本は続けているのか。そのような考えを深めていくと、「昭和歌謡」とはなにかということを、外国人に説明できるようになるかもしれません。

 それは、合理性だけを考えて西暦に統一すべきだということや、よくわからないまま元号と西暦を併用していることよりも、自分を少し豊かにしてくれると思います。

 最後に、中国人が日本の文化に衝撃を受ける話をもうひとつ。日本のアニメやマンガは中国でも人気ですが、その理由のひとつは、弱い人や、いじめられっ子が主人公になることです。

 中国の物語では、強くて頭の良いスーパーヒーローが基本的に主人公です。「ドラえもん」も、「エヴァンゲリオン」も、力がなくなることをカラータイマーでわざわざ敵に知らせる「ウルトラマン」も、中国では考えられなかったのです。

 すると、実際に子どもの頃にいじめられっ子だった人が、日本のマンガに衝撃を受け、日本に留学したいと思うようになり、いま、本当に本学に留学しています。

 日本は多様性に欠けるといわれますが、本当にそうなのか。日本を相対化することで、気がついていなかった日本の姿に気がつくことがあるかもしれません。すると、いろんな意味で多様性があることを知り、今度は、それを意図的に伸ばしていくことができるようになるかもしれません。

 日本に元号が脈々と生き続けることを考えることは、そんなことが見えてくるきっかけになると思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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