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行政はなぜ必要?なくては困るが、甘えすぎも要注意!

西村 弥 西村 弥 明治大学 政治経済学部 教授

日本国民の行政に対する信頼感は、諸外国に比べて圧倒的に低いというデータがあります。その原因は何なのか。また、民主制において、国民と行政はどういう関係が望ましいのか、あらためて考えてみましょう。

日本人は行政に甘えすぎている?

西村 弥 世界の大学の研究者が協力して行った、自国の行政に対する信頼度調査によると、日本は圧倒的に低いという結果が出ています。

 確かに、最近、官僚幹部が政治家の意向を忖度し、公正さを欠く判断がなされたり、組織的に公文書の改ざんが行われたり、業者から便宜供与を受けていた官僚がいたりなど、にわかに信じられないような不祥事が続いています。

 しかし、実は、日本の官僚は世界的に見れば、相当モラルが高いといわれています。

 実際、ひどい汚職や非効率な行政が行われている国もあります。それなのに、日本の行政に対する信頼度が低い理由は、まだ定説はありませんが、一説では、日本人は行政に対する期待値が高く、その期待値がクリアされないため、信頼度が高まらないのではないかということです。

 実は、私たちが行政職員を直接見る機会は少ないのですが、行政は、直接供給を担当していない分野においても、様々な関与を行い、市民生活の安全性や利便性を高めるために重要な影響を及ぼしています。

 例えば、鉄道や道路の安全管理や、そのための様々な規制の実施、事故などが起きたときは運輸安全委員会が再発防止に尽力します。行政は、公益性の高い問題について、公平性や中立性、公正さを基に、客観的に、透明性の高い活動を行う責任を担っているわけです。

 それは、行政にとって当然のことかもしれませんが、他方、私たち市民はそれに期待し、頼りすぎている面もあります。

 例えば、東京都は、住民の要望に応えてカラス対策を行っていますが、そもそも都内にカラスが増えたのは、住民や飲食店などのゴミ出しに問題があったからではないでしょうか。

 しかし、ゴミ出しの改善をやり尽くす前に、行政機関に対応を求めたり、クレームを入れたりします。つまり、問題を本当に自分事として捉えず、解決を行政に丸投げしているのです。

 しかし、生活の安全性や利便性の確保を、行政任せの丸投げにしていて良いのでしょうか。

 アメリカの方が行政に対する信頼度が高いという結果が出ていますが、行政のサービスは日本よりもはるかに低いといえます。もともと、アメリカ社会は、自らの責任で判断、行動することや自助と共助が前提だからからかもしれません。ただ、それが単純によいかどうかというのは別です。

 例えば、13年前に巨大ハリケーンで大きな被害を受けた川沿いの住宅地が、復興されずにゴーストタウンのままになっているといいます。財政の問題もあるのでしょうが、川沿いという危険な場所に住んだのは住民の責任で、行政はそこまで支援できないというのです。

 また、ハワイのキラウエア火山を訪れたとき、噴火後の冷えた、比較的新しい溶岩の上に家を建てて住んでいる人を見かけました。行政機関はそれを規制しないのです。再び噴火が起きたら、彼は自分で逃げるだろうという理屈です。危険なことを知っていて、そこに住むという個人の判断に、行政は介入しないのです。

 ともに、日本ではありえない議論です。これらは極端な例ですが、基本的に、安全性や利便性を行政に頼りきるのではなく、自分で確保し、リスクにも自分で備えることが前提の国の人たちの方が、日本よりも行政に対する信頼度が高いということを考えると、私たちは、私たちの社会を見つめ直してみることも必要なのではないかと思います。

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