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2017.12.27

いま、地域活性化の目玉として変貌する公立図書館に注目したい

いま、地域活性化の目玉として変貌する公立図書館に注目したい
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公立図書館というと、趣味や教養の本を借りたり、学生が勉強する場所、というイメージがありますが、最近はさらに機能や役割が広がり、地域の情報拠点や地域活性化の中核となるところもあります。いま、公立図書館はどう発展し、その背景には何があるのでしょう。

地域住民の多様化する知のニーズに応える役割を担い始めた公立図書館

青柳 英治 文部科学省が組織する有識者会議の1つである「これからの図書館の在り方検討協力者会議」が、2006年に「これからの図書館像:地域を支える情報拠点をめざして(報告)」という報告書を出しました。これが1つの契機となり、公立図書館を地域の発展に欠かせない施設と位置づける動きが見られるようになっています。その背景には、大きく3つの要因があります。1つは、バブル経済の崩壊以降、長期にわたって景気が低迷したことが挙げられます。企業はいままでのやり方を踏襲しているだけでなく、新しい事業やビジネスチャンスに挑戦する必要に迫られました。そのためには法律や税務、特許などの知識や情報が必要不可欠ですが、その点で大企業と比べて情報格差がある中小企業などに、必要な情報や資料を提供することが、公立図書館に求められ始めたのです。2つ目は、1990年代後半から始まった地方分権の流れが挙げられます。地方公共団体は地域の状況に応じた独自の政策を立案していくことが求められ、また、地域住民は行政や市民社会の形成に直接参画する機会が増えます。そこで、両者には、行政資料やさまざまな関連情報、資料が必要になります。公立図書館はレファレンスサービスを通して、そうしたニーズに応えるようになりました。サービスの提供にあたり、図書のみならず雑誌や新聞記事、インターネット情報源なども活用した総合的な情報提供サービスを行う情報拠点となることが求められたわけです。特に、地域住民にとっては、住民による自律的な判断を支える施設として位置づけられていきました。3つ目は、住民の高齢化が挙げられます。高齢化とともに増える病気やケガ、介護など「医」に関する基礎的な情報を求める声が高まってきたのです。近年、治療にあたって医師がインフォームド・コンセントを行うことが義務づけられています。そこで医師の説明を十分に理解するには、患者やその家族の側にも、医療や医薬品に関する知識、また、医療機関や医療制度に関する情報を身につけておくことが必要です。こうした情報提供も公立図書館が担うようになってきました。

 つまり、公立図書館は、身近な生活の問題や地域の課題解決を支援するための情報拠点となってきているのです。インターネットが発達した現代では、知りたい情報は、身近にあるパソコンやスマートフォンで検索すれば何でも得られると思われがちですが、逆にいえば、的確な検索ができなければ、十分な情報を得ることができません。場当たり的なキーワード検索では、部分的な情報しか得られない場合もあり、それでは体系化した知識は身につきません。司書の助けを借りることができる公立図書館では、目的にかなった資料や情報を得たり、知識の幅を広げることができると、あらためて認識されるようになってきたのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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