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2017.12.27

いま、地域活性化の目玉として変貌する公立図書館に注目したい

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新しい図書館像が注目され始めている

 地方公共団体と住民が協働で、町づくりの中核に公立図書館を位置づけ、活動しているところがあります。長野県の小布施町では、町民を中心に図書館づくりの委員会を立ち上げ、2009年に町立図書館を開館しました。そして、サービス活動の1つとして、「まちじゅう図書館」構想をスタートさせました。所有する本が多い人や図書館への本の寄贈を考えていた人が、自宅や店先に本を並べ、通りすがりの人と、本を通してコミュニケーションを広げようという取り組みです。もともと観光地でもあった小布施町は、こうした取り組みが知られて訪れる人が増え、経済波及効果も上がっているといいます。公立図書館を地域住民の社会参加の場と捉え、図書館の活動や事業に参画してくれる地域住民の協力を得ることで、町の活性化につなげていくことを意図しています。

 また、公民連携(Public Private Partnership)による町づくりを推進しているところもあります。岩手県の紫波町では「オガールプロジェクト」に取り組んでいます。プロジェクトの中核に、さまざまな機能をもった複合施設群があり、その中のオガールプラザは官民複合施設で、紫波町図書館のほか、交流館、子育て支援センター、産地直売所、医療施設などが入っています。図書館はこれらの施設と連携して、たとえば、産地直売所では、野菜や果物の棚に、それぞれの食材を使った図書館所蔵のレシピ本を紹介するポップが置かれています。産地直売所のお客さんを図書館に呼び込んだり、レシピ本を読んだ人は農産品を買いたくなる仕掛けです。また、図書館には、農業を支援するための関連資料を並べたコーナーや、農業関連の有料データベースが無料で使えるコーナーもあります。農業を基盤とする紫波町では、図書館は農業支援サービスの一環として、産地直売所と連携して農産品の販売促進にも関わり、地域の振興に貢献しているのです。こうしたサービスをより理解し、利用してもらうために、図書館の司書は農家まで出向き、図書館のサービス内容や活用の仕方を説明する活動も行っているといいます。

 公立図書館は地域に対し、課題解決に資するサービスを提供する情報ハブとしての役割も担い始めました。公立図書館は、指定管理者に頼るのではなく、地方公共団体が責任をもって図書館の運営に主体的に関わり、地域住民との協働や、関連機関との連携・協力を図っていくことが、新しい図書館像として、今後、注目されていくと考えます。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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