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20世紀の“忘れ物”が21世紀を生きるヒントになる

明治大学 大学院 理工学研究科 建築・都市学専攻総合芸術系准教授 鞍田 崇

自分らしさを発揮することができる「1/3社会」

 では、拡大する社会のなかで置いてきぼりにされたものとはなんでしょう。以前、建築家の小嶋一浩さんと話をしたとき、彼は、「20世紀は人口が爆発的に増え、急増したニーズに対応するために、なるべくフラットに平均化して、効率的にサービスを供給しようというシステムが整っていった」と言い、それを「大きな矢印の時代」と呼んでいました。この譬えは建築の視点から言われたことですが、社会のシステムも、ひとつの大きな矢印に個々を集約する時代であったといえるのではないでしょうか。例えば、自分というものを消して、組織に隷属、従属する帰属意識が求められたり、個性を発揮しているようで、実は、まさに大きな矢印であるトレンドに乗っていることであったり。つまり、人口が増加し、拡大する社会では、否応なくひとつの平均値に束ね、大きな矢印に集約することが、必要な社会システムであったわけです。このとき置いてきぼりにされたのが、小さな矢印たちがもっていた細かなディファレンス(差違)です。

 集約によって生み出された20世紀の繁栄の中で、置いてきぼりにされたこの小さな矢印たちが、これからは活きる時代であると、小嶋氏は指摘しました。この指摘はまさに1/3社会を考えるヒントになると思います。大きな矢印に集約されない、細かな差異を秘めた小さな矢印の具体例は、組織に対する個人でもあるでしょうし、都市部に対する地域社会でもあるでしょう。人口減少の中で大きな矢印が成立しなくなっていくからといって、人であれ、街であれ、個々に孤立してはやっていくことはできません。新たな結びつきや連携を目指すはずです。実際、普及したSNSなどをみると、そこには既存の組織によるのではない、新しいコミュニティの形成があるのがわかります。こうした新しい結びつきや連携において活きるのは、自分はどんな矢印なのか、ということです。つまり、帰属が求められた時代から、自立が求められる時代になるといえるのです。

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