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2016.10.05

天皇の生前退位の「意志」を認めない「意図」の方が問題

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天皇が投じた一石を重く受止め、21世紀の天皇制のあり方を検討すべき

 いま、私たちが抱いている天皇のイメージは、実は明治時代に形作られたものが多いのです。そして、明治天皇のような存在を天皇の理想と考える人たちがいます。例えば、自民党の改憲案の中には、天皇を元首化する内容が織り込まれています。しかし、時代はもう明治時代ではありません。時代を遡った制度を創れば、どうしても無理が生じます。世界を見れば、時代にそぐわない無理を重ねた王室は国民の恨みをかい、廃止に追い込まれています。日本の天皇制は古代から、権威と権力を併せもつことなく、時代に即してあり方を変えてきたことで維持されてきました。戦後は、憲法が変わり天皇の役割が代わったことを柔軟に受入れたことで、以後、安定してきました。これを戦前に戻すようなことは、逆に天皇制が維持できなくなるだけでなく、天皇・皇族を非常に非人間的な環境に固定化することになります。

 その意味で、今回、天皇が投じた一石は非常に重いと思います。戦後の、そして21世紀の日本の天皇制を、ここでしっかり考え、皇室典範の改正などを通して相応しい制度を整えていくべきだと考えます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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