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誰もが生きやすい社会の構築に向けて ―経済政策からの考察―

飯田 泰之 飯田 泰之 明治大学 政治経済学部 准教授

「再分配政策」の重要性

飯田泰之准教授 経済政策で重要なのは、潜在GDPを成長させて経済の実力を上げる「成長政策」、実力を発揮する「安定化政策」、そして結果として生じる不幸をメンテナンスする「再分配政策」を継続することであり、一つでも欠ければ政策は長続きしない。
 このなかで「再分配政策」はつい見落とされがちで、成長・安定化の阻害要因であるかのようにとらえられることがある。「成長政策」や「安定化政策」で経済が成長すると、パレート改善(個人の満足水準は低下させず、少なくとも一人の個人の満足水準を高める変化)が起こる。つまり、悪くなっている人はいないが、良くなっている人もいるという格差の発生だ。再分配がなければこの格差に対する不満が蓄積し、政権基盤を揺るがす要因となりかねない。「アベノミクス」には、成功すればするほど、この「再分配政策」が欠けていることによる問題が深刻化するだろう。私は所得と資産に依存した再分配が必要と考えている。資産への課税の方法としては相続税の増税がよいだろう。たとえば一律10%の相続税を課せば8兆円の国庫収入となり、これは消費税増税の3%に相当する。広く浅い相続税には資産逃避の心配も薄い。さらに相続税増税は、消費喚起や生前贈与の増加など、増税の中でも唯一景気にプラスに働くとされている。
 不況による税収減と社会保障費の増大によって国と地方の財政は悪化した。それを打開すべく、来年春に消費増税が予定されているが、デフレが続く中、増税で解決しようとしても逆効果である。比較的控えめな内閣府の試算でも3%の消費税引き上げは経済成長率を1%以上押し下げるとされており、税収がさらに不足する事態を招きかねない。消費増税が必要であることに異論はないが、段階を踏んで時間をかけて上げていくのが望ましい。今の経済状況の中での3%消費増税は、大きな問題をはらんでいると言わざるを得ない。

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