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2025.02.27

「できたらいいな」のアイデアを実現へとつなぐ、新材料開発の可能性

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非接触の刺激でエネルギーを供給して動かせる、新材料の開発をめざす

 我々の研究室では、スマートマテリアルのなかでもとくに、材料に対して音波や光など非接触の刺激でエネルギーを供給して動かせるものを開発しています。

 たとえば、金属のフィルムとゴムのフィルムを特別な条件で貼り合わせ、光によって動かせる材料を開発中です。普通の材料は熱膨張を起こすのですが、ゴムはある一定の条件をつくると、熱収縮を起こします。その条件をうまく利用し、大幅に動くよう改良を重ねています。

 基本的な考え方はバイメタルと同じであるものの、バイメタルの動く量は微々たるものです。ゴムもただのゴムではなく、光を効率的に熱に変えられる仕組みをゴムの中に仕込むなど、原料にさまざまな混ぜ物をしてつくり込んでいます。2つのフィルムを組み合わせる際も、厚さをどうするべきか力学的に計算し、ゴムの熱収縮を起こす条件も緻密に算出して、改良を重ねていきました。その結果、ここ数年で数百倍もの動きを見せる成果が出ています。

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有川先生の研究室が開発した、光を当てるとその熱で大きく収縮する材料(実験・撮影:川端)

 こういった材料に対し、レーザー光などを使えば、遠くからでも動かすことができます。どこでどう使うかは、これからのアイデア次第ですが、開発が進み多くの人に知られるところとなれば、今まででは考えられなかったような新しい活用法も見えてくるでしょう。

 また、音波で動かすものも開発中です。こちらは材料そのものではなく、材料の構造に手を加えています。たとえば六角形の蜂の巣型の周期構造を利用し、たくさんつなげていくことで一つの材料とし、音波や超音波で動くメタマテリアルとして扱えるようにしています。

 うまく仕上げられれば、たとえば将来、ドラッグデリバリーに応用できるのではと考えています。体内に入れた薬のカプセルを、超音波などを使って狙った部位で開くことができれば、薬効を最大限に発揮させ、副作用を最小限に抑えることも可能です。

 また、体内でなくても、配管や圧力容器など、直接電気を通せない場所や直接道具を送り込めないような場所でも活用できるでしょう。外部から刺激を与えることで何か仕事をしてもらうような技術にもつなげられるかもしれないと期待しています。

 スマートマテリアルという言葉が浸透するにつれ、研究される方も次第に増えてきて、より開発が盛んになってきているようです。まだ利用例は少ないですが、将来的には便利なものへとつながっていくはず。アイデアを出して、さまざまな物理現象を組み合わせ、新たな機能性を発揮する新材料の開発には、ワクワクするような夢があります。ここで生まれたシーズを産業界に橋渡しし、実用化へとつなげられるよう、これからも研究に取り組んでいきます。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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