外部からの刺激に対し、自ら何らかの応答をする材料がスマートマテリアル
現在、私が力を入れているのが、スマートマテリアルの開発です。スマートマテリアルとは、外部からの刺激に対し、自ら何らかの応答をする材料のことです。熱、光、電磁波、振動など、さまざまな刺激を受けると、色や形が変わるいといった特性をもつものを総称しています。
たとえばゴムとプラスチック、両方の特性をもった、形状記憶プラスチックもその一種です。ゴムのように分子が切れずに変形し、熱を加えるなどの刺激を与えると、分子が動きやすくなり、元の形に戻ります。
また、日本で開発されたものとして有名なのが、ひび割れや傷などの欠損ができたときに自ら修復するセラミックスです。修復剤として作用する物質を材料内に配置し、亀裂が入ったらその物質が反応し傷を修復する仕組みです。高温の環境下で空気と触れて酸化反応を起こすと修復するように設計し、飛行機のエンジンなどに利用しようと開発が進められているそうです。修復速度が早くなる研究も相当進歩しているようです。
フィルム状にした異なる金属を組み合わせたバイメタルと呼ばれるものは、昔から活用されています。温度が変化するとそれらの金属の熱膨張係数の差によって少し曲がる特性があり、何十年も前から温度センサーなどに使われています。
分子素材そのものを開発しようという研究も行われています。光を当てると形が変わる分子もあり、たとえば紫外線を当てると曲がり、普通の光を当てると元に戻るといった反応を示す分子もすでに誕生しています。
これらのように、開発するには、素材自体をつくるアプローチもあれば、既存のものを組み合わせてつくるアプローチもあります。スマートマテリアルは範囲が広く、現状さまざまな場所でさまざまな研究が活発に行われています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。