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2022.07.15

健康的な長寿のために、新たな機能性物質を見つける

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大切なのはバランスを保つこと

 私は微生物の研究を通して、より抗酸化活性の強いカロテノイドの探索を行っています。

 実は、現在までに人が地球上で発見した微生物は、微生物全体の数パーセントに過ぎないと考えられています。つまり、カロテノイドに限らず、人にとって有用な物質を生産する微生物は、地球上にまだまだたくさん存在すると考えられるのです。

 未知の微生物から有用な機能性物質を発見することで、私たちの健康の維持増進に役立てられる可能性があると、私は考えています。

 先に述べたように、長寿が実現している日本では健康寿命を延ばすことが、個人にとっても社会にとっても非常に有益であることは間違いありません。

 しかし、一方で、マスコミなどで、からだに良い食品や物質が紹介されると、そればかりを過剰に摂取する人が増えますが、それは効果がなかったり、逆効果になることもあります。

 例えば、ビタミンCがからだに良いことは事実ですが、では、たくさん摂れば摂るほど良いのかというと、そうではありません。体内で使い切れない分はそのまま排出されるのです。要は、たくさん摂ったからといって効果が上がるわけではないのです。

 活性酸素も決して有害なだけの物質ではありません。

 例えば、白血球から生成されるスーパーオキシドや過酸化水素などは、体内の免疫機能や感染防御に関わっていることが知られています。また、細胞間のシグナル伝達や細胞の分化などに利用されていることも明らかにされています。

 つまり、活性酸素は悪者であり、とにかく消去すれば良いと安易に考えるのではなく、加齢により低下する抗酸化力を補ったり、不要な活性酸素生成の機会を減らして、活性酸素の生成と抗酸化防御機構のバランスを保つことが大切なのです。

 カロテノイドなどの機能性物質をそのために活用することは、からだにとって有用なことの一つになると思います。それが健康の維持増進に繋がり、健康寿命を延ばすことに繋がっていくのです。

 そういった意味では、なにごとも極端に偏ることなく、バランスを心がけることがQOLの維持や向上にとって重要です。

 食生活の節制は、もちろん大切なことですが、あまり厳しくすると精神的なストレスが溜まってしまう可能性があります。たまには飲酒したり、好きなものを食べることがあって良いと思います。運動も過度にすると、からだを傷めたり、細胞の老化を早めることにもなります。

 日頃からこうした知識を得るように心がけ、自分のからだにとって本当に良いことを実行していくことをおすすめします。


英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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