活性酸素を消去するカロテノイド
では、こうした活性酸素を抑えることはできないのか。実は、私たちのからだには、活性酸素が過剰に蓄積されることを防ぐ抗酸化防御機能があります。それは、活性酸素を消去する内在性の抗酸化酵素です。
ところが、この内在性の抗酸化酵素は加齢とともに生産されにくくなっていきます。つまり、加齢とともに体内には活性酸素が蓄積されやすくなるのです。
そこで、内在性の抗酸化酵素の減少を補う物質を摂取することが有効になってきます。こうした物質を外因性の抗酸化物質といい、代表的なものの一つがカロテノイドです。
カロテノイドとは、微生物や藻類、植物、動物に広く分布する赤色、橙色、黄色の天然色素のことです。一般に、トマトのリコペンや、ニンジンのβ-カロテンがよく知られていると思います。
人を含めて動物は自らの体内で合成することはできませんが、カロテノイドを生産する植物などを摂取することにより、体内に取り込むことができます。
例えば、鮭も自らカロテノイドを生合成することはできませんが、植物プランクトンなどに由来するカロテノイドを取り込むことによって、その身がサーモンレッドと言われるきれいなオレンジ色になるのです。
カロテノイドは、一重項酸素に対して強い抗酸化作用を発揮します。カロテノイドは、不安定な状態の一重項酸素からエネルギーを受け取り、それを熱として放出します。
エネルギーを失った一重項酸素は安定した三重項状態に戻ります。つまり、不安定状態で活性の強い活性酸素が、安定した状態の通常の酸素に戻るわけです。これを活性酸素の消去と言います。
カロテノイドの基本構造は、大きく2つの部分から構成されています。この2つの部分の組み合わせ等により、数多くの構造が存在し、現在、750種類以上の天然カロテノイドが報告されています。
カロテノイドが有意な一重項酸素消去活性を示すには、ある構造をもつことが必要で、その構造によって、その消去活性の強さが異なります。また、赤色が強いカロテノイドほど一重項酸素の消去活性が強いことが知られています。
これらのことは、様々なカロテノイドの特性を把握することによって、カロテノイドをより有効に利用できる可能性があることを示しています。
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