
2023.01.26
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近年、AIやDX、データサイエンスなどの言葉をよく耳にするようになりました。しかし、なんとなくわかっているような気がしても、本当にその内容を理解し、有効に活用できている人はまだ少ないようです。これらはどういう仕組みで、どういったことに役立てられるのでしょう。
ここ何年か、AIやDX、データサイエンスなどの言葉をよく耳にするようになりましたが、バズワード的な使われ方で、正しく理解している人は少ないのではないかと思います。
しかし、同じように10年ほど前に流行ったビッグデータという言葉が、最近は理解され、活用されるようになってきていることを考えれば、いまのバズワードも、デジタル活用を身近なものにしていく流れのひとつで、それ自体は悪いことではないと思っています。
実際、最近は、デジタルを活用したデータ分析への関心が高まっていて、例えば、ノーコード分析と言われる分析ツールが普及しています。
これは、プログラミングなどの知識がなくても多くの人が使いこなせるツールで、店舗の売り上げ分析や、町工場などで機械や設備に異常が発生する予測などに役立てることができます。
しかし、ノーコードなども含む汎用タイプの分析に限界があり、さらに、自分たちの現場に適応した、より精緻な分析を求めたくなります。そのようなカスタマイズをしようとすれば、専門的な知識やスキルが必要になってきます。その中心になるのが数理科学です。
近年、データ分析において活用されているものの一つに、数理科学の知識を背景として立てられる数理モデルが挙げられます。数理モデルとは、現象が起こる過程を数式によって表そうとするものです。
現象とは、なんらかの要因が関係し合って発生するのですから、その要因と関係性を数式で表すことができるわけです。
例えば、このコロナ禍で、ひとりの感染者がいると、感染は周囲にどのように広がっていくか、という予測を目にした人も多いと思いますが、これは、数理モデルによって計算されたシナリオなのです。
つまり、現象が起こる法則のようなものを数式化し、計算することで、実際の現象をあらかじめ予測したり、シミュレーションすることができるわけです。
すると、その予測の精度を高めるためには、そこに関わる要因や関係性をより正確に捉えることが重要になります。
例えば、店舗の売り上げを予測しようとすれば、それに関係する要因は、曜日であったり、天気であったり、時間帯であり、それらがどのように関係しているのかを把握する必要があります。
そこで、様々なパターンを想定した数理モデルによって立てられたいくつかのシナリオに対して、実際の現場で取ったり、観測したデータのもつ情報を加えて、実際に起こった現象とのずれを分析します。
すると、どのシナリオが現実に近かったかがわかり、さらに、その数理モデルの修正などを行うことも可能になります。それによって立てられるシナリオは、より精度の高い予測になっていくわけです。
この、「数理モデルの動き」と「データのもつ情報」を融合させ、より精度の高い計算結果を得ていく手法が「データ同化」です。