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免震構造の普及で住み続けられる街づくりを

小林 正人 小林 正人 明治大学 理工学部 教授

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地震国と言われる日本。実際、ここ数年は、大きな地震が毎年のように起こっています。人の力で地震を止めることはできませんが、地震の被害を最小限度に抑えるための様々な技術は開発されています。近年、注目されている建物の免震構造には、どのような機能があるのでしょう。

東日本大震災でも機能が失われなかった免震構造の病院

小林 正人 地震発生のメカニズムは、プレートテクトニクスで説明されます。地球の表層部を覆う硬いプレートは一様ではなく複数あり、それが動き、重なり合うことでプレートの境界や内部で地震が発生します。

 日本はそのプレートがいくつも重なり合うところに位置しているので、世界的に見ても、地震が多い地域になっているわけです。

 実際、東日本大震災を引き起こした2011年東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9以上という世界でも最大規模の地震でしたし、以後も、震度6弱以上の大きな揺れが毎年のように起きています。

 この地震の発生メカニズムは地球規模のもので、人の力で止められるものではありません。そこで、耐震工学の研究者や技術者は地震による被害を最小限度に抑えるために、様々な技術を開発してきています。

 例えば、建物と、その中にいる人たちを守るための建築構造があります。それは、ひとくちに耐震建物などと言われることもありますが、「耐震」、「制振」、「免震」の3種類に大きく分けられ、それぞれ構造が異なるとともに、特長にも違いがあります。

 耐震構造は、柱や梁、壁、筋かいなどで建物に高い強度や変形性能を持たせて、地震の揺れに抵抗する構造です。

 制振構造は、建物の内部や屋上に、振動のエネルギーを吸収するダンパーという装置を組込み、建物の振動を効率よく抑えて被害を最小限に抑えようという構造です。

 免震構造は、積層ゴムに代表されるアイソレーターという装置を建物の基礎部に設置し、地震の揺れが建物に直接伝わらないようにする構造です。地面がガタガタと揺れても、アイソレーターの効果によって、建物はゆっくり揺れるように動きます。地震のエネルギーを基礎部で吸収することで建物に被害を生じさせず、人命や建物内部のものを守ろうとする構造ともいえます。

 2011年東北地方太平洋沖地震の際、免震構造で建てられていた石巻市の病院が、建物にも設備にも損壊がほとんど生じず、そのまま病院としての機能を維持することができました。

 さらに、周囲の社会インフラが大きな被害を受けて機能しなくなったため、この病院は災害救助拠点としても機能しました。

 実は、2016年熊本地震の際も、免震構造で建てられた阿蘇市の病院で同じような状況になりました。

 例えば、地域一帯が停電する中、病院施設内の非常用自家発電装置はまったく被害がなかったため、40時間後の電力復旧まで、問題なく病院機能を継続することができたのです。

 このことは、免震構造の大きな特長を示しています。つまり、地震から人命を守るだけでなく、施設の機能を守り、地震後も継続して施設を使用できるのです。

 このような性能は、病院にとどまらず、公官庁施設や放送施設、データセンター、大型物流倉庫など、社会インフラにとっても非常に重要なことです。そのため、近年では、こうした施設が免震構造で建てられる事例が増えています。

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