2024.03.14
- 2021年8月5日
- IT・科学
気候変動を起こす人の営みを変えるために必要な知恵とは
矢﨑 友嗣 明治大学 農学部 准教授
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近年、気候変動により異常気象が増えていると言われます。その大きな要因は、二酸化炭素などの温室効果ガスであるとされ、様々な対策が始まっています。でも、私たち自身が温室効果ガスのメカニズムや、人と自然の関係などを正しく理解することが、まず、必要です。
異常気象の要因である温室効果ガスとヒートアイランド現象
近年、地球温暖化が大きな問題としてよく取り上げられます。実際、データを見ると、1900年~1929年の平均気温と、2018年の年間平均気温を比較すると、世界では0.7℃、日本では1.2℃ほど上昇していて、東京に至っては3℃ほども上昇しています。
3℃というとたいしたことはないと思われるかもしれませんが、それは、東京が、1900年~1929年の鹿児島や宮崎並みの気温になったということなのです。その要因として挙げられるのが、温室効果ガスとヒートアイランド現象です。
二酸化炭素などが温室効果ガスと呼ばれるのは、それが大気中に増えると、地球に布団をかぶせたような状態、つまり、地球を温室のようにするからだと言われますが、もう少し正確に言うと、放射エネルギーの出入りのバランスが変わるということです。
物質は、その温度に応じてエネルギーを放射しています。地表も、太陽からのエネルギーによって温められるとエネルギーを放射します。そのエネルギーは大気などに吸収されますが、大気の吸収力を超えた分は宇宙に出ていくことになります。
一方、エネルギーを吸収して温まった大気もまたエネルギーを放射するので、地表付近の温度は適度に温められた状態を保つことができるわけです。
ところが、大気中に二酸化炭素などが増えると、大気のエネルギー吸収量が増えるのです。そのため、宇宙に出ていくエネルギーが減り、さらに、エネルギーをより吸収した大気が放射するエネルギーは増えることになります。
結果として、大気から地表へのエネルギー供給が増え、地表付近の温度が上昇することになるのです。これが、地球全体の温暖化に繋がっていくわけです。
一方、ヒートアイランド現象とは、都市の中心部に起こる現象です。要因としては、大きく3つあります。
まず、都市は植物が生えている緑地が少ないことです。植物は、体内の水分を大気中に放出する蒸散を行っています。これは、打ち水と同じで水を気化させて熱を奪う効果があるのですが、植物が少ない環境では、その効果も小さくなるわけです。
次に、車やエアコンの室外機などによる人工排熱が多いこと。
そして、高い建物が密集していることです。そのため空気が動きにくくなり、熱がこもるような状態になってしまうのです。
東京の平均気温は1945年くらいから日本平均を上回っていくのですが、それは、ちょうど、戦後の復興期から、巨大な都市へと東京が変貌していく状況と重なります。
東京への人口集中が進行する一方で、農村は衰退していくことになります。戦後、農地や里山的な土地利用が減退し、環境が荒廃していっています。
こうした状況は大きな社会問題になっていますが、実は、地球温暖化やヒートアイランド現象の緩和、さらに、エネルギーの循環の観点からも大きな問題なのです。