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脳の活動を可視化することで、人は新たな自分に変われる

明治大学 理工学部 教授 小野 弓絵

2025年問題に対して有効対応策のひとつになる

 リハビリテーションにBMIを活用する際は、まず、脳の活動を計測する装置を頭に装着します。頭にフィットした帽子を被るようなイメージです。その帽子は脳波計とパソコンに繋がっており、パソコンから、グローブのように手に着けるロボットに繋がっています。

 それらを装着した患者さんに、例えば、手に向かってボールが転がってくる映像を見せ、同じ動きを想像してもらいます。健康な人であれば、ボールを掴もうとする脳活動が出ますが、運動障害のある脳卒中患者さんではこの信号が弱かったり、出なかったりします。

 BMIシステムは脳の活動を検知すると、空気圧で動くロボットのグローブを、ボールを掴むために動かすのです。つまり、患者さんにとっては、脳をうまく活動させられたとき、動かないはずの手が動いた状況になるのです。

 しかも、最初は、脳の活動がちょっとでもあればグローブが動きますが、徐々に、脳の活動が強くならないとグローブが動かないように設計してあります。要は、ロボットによって闇雲に体を動かすのではなく、脳の活動と連動するように動かすのです。

 このトレーニングを繰り返していくと、装置を外しても、患者さんは自分で手が動かせるようになったり、手の可動範囲域が広くなったりします。つまり、障害が起きて途切れた経路に代わり、新たな経路がつくられ、再構築されていくわけです。

 この装置を病院などで実際に使ってもらったところ、リハビリの成果がなかなか出なかった患者さんの手が動くようになるなど、医師やセラピストも驚くような効果が出たこともありました。

 また、従来のリハビリに比べ、患者さんのやる気を引き出す効果もあります。それは、脳と連動したロボットの支援によって、自分の手が動くことをイメージしたり、実感しやすくなるからだと思います。

 現在は、操作が簡単な脳波計と、スマートフォンのアプリによるヴァーチャル映像で、ゲーム感覚でリハビリのトレーニングができるようなセットを開発中です。

 実は、入院中のリハビリは1日3時間まで、入院期間は最大180日と決められていますが、こうした装置があれば、入院室や、退院後は自宅でも、1人でトレーニングを続けることができるようになると思います。

 また、装置によってリハビリを進行させ、その進捗状況や結果などをパソコンに記録するので、セラピスト1人で、数人の患者さんに対応することもできるようになります。

 そのため、団塊の世代が75歳以上になり、医師や介護者不足が懸念される2025年問題に対しても、医療関係者の負担を減らしたり、効果的なリハビリで患者さんの社会復帰を促進することが期待できるBMIは、有効な対応策のひとつになると考えています。

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