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脳の活動を可視化することで、人は新たな自分に変われる

小野 弓絵 小野 弓絵 明治大学 理工学部 教授

脳の活動の可視化は脳の活動を変える有効な手段

 もうひとつ、BMIには重要なポイントがあります。それは脳の活動を可視化することです。

 先に述べたように、人がなんらかの活動をしようとするとき、脳の特定の部位が活動することは、神経科学の分野で解明されてきていますが、通常、私たちが自分の脳の活動を目にすることはできません。

 しかし、脳の活動を、例えば棒グラフなどで表し、それを目で確認すると、私たちは、意図的に脳の活動をコントロールすることができるようになるのです。それは、ニューロフィードバックと呼ばれ、自分の脳活動のパターンを能動的に変化させる技術として注目されています。

 例えば、ヘビ恐怖症の人の治療は、ヘビを少しずつ見て慣らしていく方法が一般的です。でも、それはヘビに対する恐怖を少しずつ暴露することであり、本人にとっては非常なストレスになります。

 そこで、ヘビに対する恐怖感を発生させる脳の部位の活動を棒グラフで表して可視化します。患者さんには、その棒グラフを見ながら、自ら上げたり下げる訓練をしてもらうのです。

 つまり、ヘビを見ることなく、その恐怖感をコントロールする術を身につけていくことになるのです。

 要は、脳の活動を可視化することにより、人は脳の活動に影響を与えるような行動やコントロールを意図的に行うこと、すなわち脳へフィードバックをすることができ、それによって自分の活動を高めたり、自分自身を変えることも可能だということです。

 これは、まだ研究中の技術ですが、将来、この技術が実用化されれば、恐怖症だけでなく、うつ病など、様々な精神疾患に応用されることが期待されています。

 運動障害のある人に対するリハビリでBMIを活用するのも、実は、手を動かすという脳の活動をグローブの動きによって可視化することです。

 従来のリハビリでは、セラピストが患者さんの手を触ったり、話しかけたりしながら試行錯誤し、脳に、手を動かすための新しい経路ができるきっかけを探る方法でした。

 でも、その脳の活動を可視化することで、患者さん自身が、自分の手を動かす新しい経路を脳内につくることに能動的に関わることができるようになると考えられるのです。

 つまり、動く自分の手を見ることで、手を動かす脳活動を、自ら脳内につくることができるということです。

 さらに、セラピストにとっても、患者さんの脳の活動が可視化されて確認できれば、より的確なサポートができるようになります。

 現在、私たちは、リハビリ専門の病院と共同研究を行い、様々な臨床データを集積しています。

 実は、脳卒中には様々な後遺症があり、要因も複雑に絡み合っているケースが多いのです。その多様性に応じた最適なリハビリを提供するためには、多くのデータが必要だからです。

 近い将来には、そうしたリハビリを行うことが可能になると思います。そのためのツールとして、BMIは非常に有効なものであると考えています。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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