明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

宇宙開発に貢献した「折紙」は人間の未来も救う!?

石田 祥子 石田 祥子 明治大学 理工学部 専任講師

想像力を創造力にする発想こそ、人間ならでは

石田 祥子 自然界の形から、私たちに役立つ機能を見出すという意味では、防振器の開発もそのひとつです。先述したように、円筒が潰れるときに現れるパターンは折紙でも表現できますが、このような折紙は、上から力をかけると畳まれ、力を除くと元の形に戻るので、展開収縮構造と呼ばれます。ばねのような伸縮挙動を示すのです。ところが、折紙の展開収縮構造の中には、一般的なコイルばねとは異なる挙動を示すものがあります。一般的なコイルばねはばね定数が一定とされ、フックの法則にある通り、力と変位、つまりばねの力と縮んだ距離は比例します。この関係をグラフで表示すると、直線で表わされます。ところが、折紙の展開収縮構造の中には、力と変位の関係をグラフ化するとS字カーブになるものがあるのです。S字カーブということは、変位によってばね定数は変化し、負になることもあります。そして、この展開収縮構造とコイルばねを組み合わせると、正と負のばね定数がキャンセルされて、ばね定数が0になる構造、つまり、押しても反力を生じない構造を作ることができるのです。押しても反力を生じないとは、例えば、振動を加えても、力を返さないということで、それは、防振器としての機能になるわけです。そこで、現在は、除振台や自動車のサスペンションなどへの実用化に向けて、金属製の展開収縮構造とコイルばねを組み合わせた試作器を設計し、加振実験を行って防振性能を評価しています。展開収縮構造を、ただ形が変化する構造としてとらえるのではなく、S字のばね特性という力学的な特性に着目して、防振器としての機能を生み出しました。

 球状ハニカムコアの開発においても、このような力学的視点は必要でした。球状ハニカムコアの形状は幾何学的に決まるので、コンピュータで数値計算さえすればよいように思われるかもしれませんが、幾何学的な計算だけでは、形は得られても、必要な荷重を支える強度を得ることはできません。今回、目指した試作ハニカムコアの大きさは直径40㎝で、まず、その大きさに適した素材の選定からはじまり、荷重を支えるのに必要なコア数、素材の厚みなどを検討しました。組立てる際には、最初はわずかなずれであっても、組み立てるうちに徐々に蓄積され大きなずれとなったり、素材間の摩擦、自重による変形など数値計算には現れない事象が発生しました。それは、実際に作ってみなければわからないことで、これらの検討を通して、原因を取り除くためにはどうすればよいか、さらに新しいアイデアが生まれるのです。私たちは、想像力を創造力と思いがちですが、アイデアを空想にとどめず、手を動かして形にすることがとても重要だと思います。特に、いまはコンピュータで設計ができるので、数学的な間違いはなく、これならすぐにできてしまいそうな気がします。しかし、実際は、計算には現れなかったエラーが出ます。そのときにどのように対処するか、過去の学習や経験をもとに問題を解決するアイデアを出し、実行に移せるのが、人間ならではだと思います。

IT・科学の関連記事

がんを分子レベルで早期診断するシステム開発が始まっている

2021.5.19

がんを分子レベルで早期診断するシステム開発が始まっている

  • 明治大学 理工学部 教授
  • 石原 康利
先端医療に貢献するものづくりは、汗の結晶!?

2021.3.31

先端医療に貢献するものづくりは、汗の結晶!?

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 工藤 寛之
デジタル機器に欠かせない透明導電膜の作製技術を自然界に学ぶ

2021.3.17

デジタル機器に欠かせない透明導電膜の作製技術を自然界に学ぶ

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 我田 元
ストレスから救ってくれるのは、老化の主犯の活性酸素!?

2021.2.24

ストレスから救ってくれるのは、老化の主犯の活性酸素!?

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 安保 充
イノベーションという「パン」は空から降ってくるもの?

2021.2.17

イノベーションという「パン」は空から降ってくるもの?

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 末永 啓一郎

新着記事

2021.07.27

新たな視点で社会や物事を捉えよう

2021.07.21

日本の「多文化共生」という概念を見直す時が来ている

2021.07.15

これまでの人生を振り返り、初心を思い出そう

2021.07.14

パンデミックを人類史と政治から見ると、見えてくるのは…

2021.07.13

相手への期待を込めた指導で、成長を促そう

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

3

2021.07.21

日本の「多文化共生」という概念を見直す時が来ている

4

2020.06.10

書店が本の価格を決めたら、本はもっと売れる!?

5

2019.11.08

#1 日本のアニメはいつから世界で人気になったの?

リレーコラム