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貨幣としての役割と投機の有効な対象となることは両立しない

金子 邦彦 投機性の高い金融資産とみなされる現在の仮想通貨も、貨幣とはなり得ないことがわかります。しかし、最初から仮想通貨の金融資産としての側面が注目されていたわけではありません。まず注目されたのは、煩雑な送金の手続きを簡略化し、さらに、そのコストをゼロ、ないしゼロに近いものにすることです。特に、送金コストが主要先進国の中で異常なほど高い日本では、仮想通貨は非常に有効な手段なのです。それだけでなく、現金社会から電子商社会へと移行しつつある現在では、仮想通貨の有用性が拡がる可能性は高いといえます。ネット取引が主流になれば、既存の金融業界は有形の店舗を構える必要はなくなり、さらに、サービスの簡略化にともない膨大な余剰人員が生まれることになるでしょう。冒頭に述べたように、仮想通貨は、金融業界を変革させるフィンテックのフロントランナーであるわけです。

 ところが、仮想通貨は何百倍にも高騰するという話が広まり、そこに人々は飛びついてしまいました。でも、冷静に考えてみてください。何の価値の裏付けもない仮想通貨が高騰したのは、このフィンテックのフロントランナーである期待値です。しかし、ここに人々が飛びついたことや、システムの不備によってデータの不正流出や、消失の事件が続いたことで、さらに価値の乱高下に拍車がかかりました。これでは貨幣の重要な機能である「不変の物差し」が機能せず、結果として、フィンテックの可能性が萎めば、期待値も萎むことになってしまいます。次世代の貨幣の役割を担うことができなければ、有効な投機の対象となることはなく、逆に、人々が投機の対象としなければ、次世代の貨幣としての可能性が広がります。つまり、貨幣の役割と有効な投機の対象とは、ある意味、矛楯していて、両立はあり得ないのです。

 いま、カナダ、スウェーデン、イギリスなど、世界各国で固定価格の公的仮想通貨を発行する動きが進んでいます。日本でも、中央銀行だけでなく、大手銀行を中心とした民間による固定価格の仮想通貨の動きもあります。私たちの社会が電子商社会へと進行するのにともない、仮想通貨が本物の電子通貨になっていくのかもしれません。私たちが、通貨で儲けることができるなどという誤解を捨てることが、この流れを早めることに繋がるかもしれません。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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