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リーチサイトの規制で、みんなを豊かにする方法がある!?

明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授 今村 哲也

音楽やアニメなどの著作権侵害コンテンツのリンク情報を提供するリーチサイトを、規制する議論が活発になってきています。しかし、リーチサイトの問題はいまに始まったことではなく、数年前から規制に関する議論が行われてきました。なぜ、いまだに結論が出ないのか。その背景にある問題点は何なのか、考えてみる必要があります。

リーチサイト規制に絡む、保護と自由のバランス

「リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為の行為類型」
「リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為の行為類型」
 リーチサイトとは、アップロードされた著作権侵害コンテンツのサイト情報を提供し、利用者を侵害コンテンツに誘導するためのウェブサイトを指します。リーチとは、ヒルや寄生虫を指す『leech』からきており、他人の成果をかすめ取るサイトという意味合いがあるようです。ここでいう著作権侵害コンテンツには、映画やテレビ番組、音楽、アニメやマンガなどが含まれます。こうした著作権物を、ストレージサイト(インターネットにオンラインされたレンタルサーバーなど)や、動画共有サイトなどに許諾なくアップロードすることは、著作権法を犯す違法です。リーチサイトは、こうした違法な侵害コンテンツへのアクセスを助長する行為と見なされるわけです。日本では、7~8年ほど前からリーチサイトを規制するべきという議論があり、国の審議会で検討をしたりもしましたが、具体的な規制をつくるところまでの結論は出ていません。その大きな理由は、利害関係者が多く、それぞれの主張を調整するのが非常に難しいからです。

 まず、厳しい規制を主張してきたのが、コンテンツを制作している映画会社やテレビ局、レコード会社などです。その著作権は明確であり、実際に損害を被っているのも確かです。CODA(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構)の調べによると、2014年の映画、アニメ、音楽、マンガの海外における海賊版による被害額は約2888億円(売上金額ベースで約9348億円)です。正規の収入金額が約1234億円(売上金額ベースで約3994億円)なので、この数字を見る限り、甚大な損害といえます。では、権利者の主張を反映した規制を立法化すれば良いのかというと、今度は、通信会社やIT企業、検索エンジンを運営する企業、サイトを運営する人たちなどが厳しい規制には反対します。もともとインターネットには、様々な情報をやり取りするという特性があり、それがインターネット環境を飛躍的に発展させてきました。そこには、サイト運営の自由もあるし、リンクを貼る自由も、表現の自由もあります。もちろん、そこでやり取りされるのは違法な情報ばかりではありません。ストレージサイトの多くも合法な商用に使われています。厳しい規制は、インターネットの自由を妨げ、利用の萎縮効果をもたらしたり、インターネットによるビジネスの妨げとなり、国際競争力を低下させて日本の産業の発展を阻害しかねないというわけです。また、インターネットユーザーのなかには、リーチサイトを利用して侵害コンテンツにアクセスすることを良しとしない倫理観の強い人もいれば、違法であるダウンロードさえしなければ、ストリーミングだけなら良いと考える人もいます。つまり、著作権の保護とインターネットの自由のバランスをどう考えるべきなのかは、非常に難しいのです。

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