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リーチサイトの規制で、みんなを豊かにする方法がある!?

今村 哲也 今村 哲也 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授

悪質なリーチサイトの基準づくりも難しい

今村 哲也 とはいえ、厳しい規制に反対する人たちも、悪質なリーチサイトについては規制するべきだと考えています。政府も、悪質な行為は緊急に対応するべき問題として、検討を急いでいます。しかし、何が悪質なのかについては、やはり議論があります。情報提供しているコンテンツが違法なものと認識しているのか、しかも違法なコンテンツの情報が多いのか、さらに著作権権利者の利益を害する意図があるのか、そのうえでリーチサイトを営利目的で運営しているのかなど、悪質の判断をどこに置くのかは、主観的な要素も含んでいるため、非常に難しいのが現実です。そこで、収益の流れを絶とうという議論もあります。なぜ、著作権コンテンツを違法にアップロードしたり、リーチサイトを運営するのかといえば、掲載された広告から収入が得られるからです。この広告クライアントには、一流の大手企業といわれるものも少なくありません。しかし、そうした広告主は望んでリーチサイトに広告を掲載しているわけではなく、広告配信事業社のシステムに任せられているようです。そのシステムをコントロールするのも難しいのが現実で、収益を絶つという議論もなかなか進展しません。

 では、外国ではどういった対応をしているのかといえば、例えばイギリスでは、サイトブロッキングを導入しています。ユーザーが特定のリーチサイトにアクセスしようとすると、プロバイダーが「このサイトにはアクセスできません」という表示を出し、アクセスを遮断します。日本でも、児童ポルノのサイトの規制に使われています。しかし、それをリーチサイトにそのまま応用できるのかというと、それも議論があります。例えば、サイトブロッキングの対象となるリーチサイトの基準というのは、悪質なリーチサイトの基準をどうするのかということと同じです。さらに、インターネットを楽しんでいたユーザーの画面に、突然「このサイトにはアクセスできません」と表示されたら、自分の通信を覗かれているような印象をもつ人も出てくるかもしれません。広い意味で、通信の秘密の問題に関わってくる可能性もあるのです。

 だったら、リーチサイトの規制よりも、そもそも著作権コンテンツを違法にアップロードしているサイトを取り締まるべきだ、と思われる人も多いと思います。確かに、著作権コンテンツのアップロードは現行法でも取り締まることができ、実は、以前から行われています。しかし、削除しても、すぐに別のストレージサイトにアップされることの繰り返しで、イタチごっこになっているのです。しかも、削除要請の手続きやコストは、削除要請を行った者の負担です。つまり、テレビ局や映画会社などの権利者が、自費で行っているのです。あまりに理不尽といえます。

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