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農業では人自身がビッグデータ。その活用システム構築を目指す

明治大学 農学部 農場 特任教授 小沢 聖

「ゼロアグリ」は様々な応用が可能

 「ゼロアグリ」のシステムは、まだまだ様々な応用が可能です。例えば、温暖化による高温から作物を守るにはどうしたら良いかというとき、一般的には、ハウスを覆うフィルムの機能を高めて熱を遮断したり、ハウス内にミストを撒いたりして、ハウス内の温度を高めないことを考えます。しかし、我々は作物の機能を利用することを考えています。この方がお金がかからないし、技術として圧倒的に面白く、お得感があります。例えば、気温が高い昼間は吸収が良い水、あるいは極めて薄い培養液を供給し、この影響で不足した肥料を補うために、濃い培養液を夜の早い時間帯に供給します。岩手県の陸前高田での実験では、例年、暑くなる7月中旬からキュウリの収量が激減していたのに対し、収量は全体として35%ほどもアップになりました。作物には夜の早い時間帯に、水の吸収なしに肥料を吸収する能力があります。ただし、この能力は、肥料が根に直接触れないと発揮されません。そのため、水に溶いた肥料が根に供給され続ける必要があり、養液土耕栽培でないと不可能なのです。この成果は、我々の研究の快挙のひとつで、今も機能アップに取り組んでいます。「ゼロアグリ」は、この機能を利用すべきか否かをハウス内気温で判断し、夜の早い時間帯に供給すべき肥料の量と、土壌水分を目標に保つための水の量で、培養液濃度を即座に計算し供給します。これは「ゼロアグリ」にして、はじめて可能になった栽培法です。作物の特性を解明していくほど、それに応じた緻密な設定を「ゼロアグリ」にしていくことができるわけです。

 また、通常のハウス栽培では、毎作、最初に元肥を入れ、トラクターで耕運します。しかし、養液土耕栽培では元肥を入れる必要がないので不耕起栽培ができます。この発展で生まれたのが、高度不耕起輪作です。陸前高田の無加温ハウスでは、これまで春から初秋のキュウリと、晩秋に種をまき初春に収穫するホウレンソウの年に2作でした。高度不耕起輪作では、キュウリの後にレタス苗を定植し、レタス収穫後にホウレンソウを苗で定植します。ホウレンソウ収穫後に、さらに新たなホウレンソウを定植することで年4作が可能になりました。この間、キュウリの後に土壌改良剤を入れて耕運するだけです。レタスとホウレンソウは、収穫したところに直ぐ次を定植します。そのため、レタスとホウレンソウが混ざったり、大きさの違うホウレンソウが混ざったり、今までの常識と違い、はじめ農家は大いに戸惑いました。しかしこれにより、収入が増えることはもちろん、片付け、耕運の手間を削減することができるのです。現在、年5作にする研究に取り組んでいます。高度不耕起輪作では「ゼロアグリ」が重要な裏方です。これだけ長期間の培養液供給管理は、「ゼロアグリ」なしでは考えられません。もしできる人がいたとしても、精神的に疲れ果ててしまうことでしょう。

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