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農業では人自身がビッグデータ。その活用システム構築を目指す

小沢 聖 小沢 聖 明治大学 農学部 農場 特任教授

ハウス栽培をサポートする「ゼロアグリ」システム

 日本の農業を支えているのは家族経営の農家です。農業の知識の粋もそこにあります。それを、例えば新たに農業を始めようとする若い世代に、どう引き継いだら良いのか。その目的で私たちが開発したのが、ハウスでの養液土耕栽培を支援するシステム「ゼロアグリ」です。養液土耕栽培とは、水に肥料を混ぜて点滴灌漑する栽培法です。それを効果的に行うために、「ゼロアグリ」は、培養液を供給する制御部と駆動部に加え、ハウス外の日射センサーと、ハウス内の地温、土壌水分、土壌EC(Electric Conductivity 電気伝導率を表わす。土中のチッ素などの肥料成分のイオンの量によって電気伝導度が変わる)を同時測定する土壌センサーから構成されています。この「ゼロアグリ」をハウスに設置すると、各種センサーで測定したデータをインターネットでクラウドに送信し、そこで供給培養液の量と濃度、供給時間を計算し、それを基に制御部と駆動部が稼働して、自動的に的確な培養液を供給する仕組みです。その設定は、まず、自然界が作物に対して与える要因がベースになっています。すなわち、1日の日射量が少ないときは、作物は水も肥料もあまり消費しないので培養液の供給は少なくなり、日射量が増えると、培養液の供給は多くなります。また、日射量が同じでも、作物が育って大きくなると水と肥料の要求度は高まります。それを土壌センサーが測定し、土壌中の水と肥料の減り方に応じて、供給量を変えていくのです。つまり、栽培者は「ゼロアグリ」に任せておけば、失敗することなく、作物を育てることができます。実際、大学の美術科を出た農業初心者の若者が、岩手県でトマトのハウス栽培を始めましたが、1年目は右も左もわからず酷い結果で終り、2年目に「ゼロアグリ」を導入したところ、前年に比べて2倍の収量を上げることができました。このシステムであれば、農業初心者でも最初からある程度の収穫を上げ、農業のスタートラインに立てるのです。

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