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2016.11.02

先進の光計測技術を活かし、ディーゼルエンジンを進化させる

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CO2の排出が格段に少ないディーゼルエンジンの優位性をさらに高める

 日本では、乗用車のディーゼルエンジンの割合は数パーセント程度ですが、ヨーロッパでは半数以上といわれています。日本で不人気なのは、排ガスが汚い、臭い、エンジン音がうるさい、振動が大きいというイメージが定着してしまったからです。特に1970年代、スモッグなどによる公害や大気汚染が社会問題となり、車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)が問題視され、規制が厳しくなりました。ガソリンエンジンは触媒を使ってNOxを浄化しましたが、ディーゼルエンジンは、NOxの排出を減らすと煙が多くなるトレードオフの特性があったため、ディーゼルエンジンは煙が出る、汚い、臭いと見られるようになったわけです。それに対してヨーロッパでは、NOxと煙の排出規制にバランスがとれていたことと、ドイツで優れたディーゼルエンジンの開発が進み、ガソリンエンジンに比べて燃費が良いことやトルクフルな走りの魅力が認められ、日本のように軽油がガソリンよりも安いということがないにもかかわらず、ディーゼルエンジンの優位性が市場に受入れられてきたという歴史がありました。さらに、地球温暖化が注目されるようになると、ディーゼルエンジンは二酸化炭素(CO2)の排出量が格段に少ないことが大きなメリットとみなされるようになりました。

 ディーゼルエンジンのCO2の排出量が少ないのは燃費が良いからですが、それはディーゼルエンジンの熱効率が良いからです。現状最高のガソリンエンジンの熱効率が39%くらいなのに対して、ディーゼルエンジンは43%です。私たちSIPの「ディーゼル燃焼チーム」は、この熱効率を50%以上にすることを目標にしています。しかし、それは簡単なことではありません。世界中の自動車メーカーが何年もかけて様々な技術革新を行い、1%ずつ性能を上げてきたのです。それを一気に高めるために、私たちのグループで取組んでいるのが「後燃え低減」です。 ディーゼルエンジンは、エンジン内に送り込んだ空気を圧縮して高温にし、そこに燃料を吹き込んで燃焼させる構造です。この吹き込んだ燃料をより短い時間でスパッと燃え切らせることが、効率の良いエンジンにつながります。それが「後燃え低減」です。燃え切らせるまでの時間を短くするには、圧縮された空気に、燃料を瞬時に均質に混ぜることが重要です。1/100秒ではまったく遅く、目標は1/1000秒で混ぜることです。しかし、混ぜる時間を短くするほど、今度は均質に混ぜることが難しくなってしまうのです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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