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日本のマンガは、日本の人々を多面的に写し出してきた鏡である

森川 嘉一郎 森川 嘉一郎 明治大学 国際日本学部 准教授

日本のマンガ・アニメ・ゲームの国際性

 本学がマンガ専門図書館を開設したのは2009年のことですが、この時に、このマンガ図書館を先行施設として、より大きなマンガ・アニメ・ゲームにまたがる複合アーカイブ施設を設置することを、将来構想として公表しました。

 マンガ図書館やアニメミュージアム、ゲームのアーカイブの取り組みなどは国内外にすでにあるのですが、マンガ・アニメ・ゲームの資料を横断的に保存し、展示運用するという枠組みの本格的な規模の施設は、まだ実現されていません。

 しかし、日本のマンガ・アニメ・ゲームが国際的浸透力を獲得したことには、先ほど振り返ったように、日本におけるユニークなマンガ人口の幅広さがあり、それにより発達した特質が、メディアをまたいで展開されたことにあります。研究においても、資料の展示運用においても、その国際性の獲得に関わる過程を見渡すには、横断的かつ複合的に資料を保存する枠組みが必要となるわけです。

 たとえば、細かくセグメント化された読者層に向けて作られ続けてきたマンガをもとに、少女向けに特化したアニメや、青年向けのアニメといった、ファミリーで楽しまれることを主体に作られたディズニーの作品群とは大きく異なる日本のアニメが生み出されました。『美少女戦士セーラームーン』や『AKIRA』などが、国際的に人気を博したり、それまでにないタイプのアニメとして、驚きを持って迎えられたりしました。

 マンガが人口に膾炙したことが、さらに世界へと浸透させる独特の発展をもたらしたわけです。

 こうした国際的人気から、近年、日本のマンガやアニメは、観光立国化しようとする日本の重要な文化資源として、民間企業のみならず、地方自治体や政府から注目されるようになっています。

 都立公園に設置された高さ18mの巨大なガンダム像を東京都がオリンピックを招致するために活用したり、リオ五輪の閉幕式で次回開催都市の東京をアピールするために『キャプテン翼』や『ドラえもん』をプレゼン映像に登場させたり、当時の安倍首相が自らゲームキャラクターのマリオにコスプレしてパフォーマンスをしたりと、低俗なサブカルチャーとみなされていた頃には考えられなかったような利活用のしかたがなされるようになっています。

 そして、このような国際的な浸透を果たしたことが、冒頭で紹介したような、国際的美術オークションにおいて原画類が高額で取引される状況にもつながっているわけです。そこに危惧を感ずる側面があるとすれば、日本の大衆によって育まれた作品群が、もっぱらそうした海外の美術オークションを舞台にした投機的な原理や、いずれ収蔵先となっていく海外の美術館の原理によって、個々の作品の価値が定められていくことになりかねないことです。

 こうした状況が進行する中、本学におけるマンガ・アニメ・ゲームの複合アーカイブ施設構想においても、出版社や製作会社などと連携し、原画類の保存をいかに担っていくことができるかが、目下、重要な課題の一つとなっています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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