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「フランス語は戦利品」という植民地だったアルジェリアの柔軟さ

鵜戸 聡 鵜戸 聡 明治大学 国際日本学部 准教授

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グローバル化が進む今日、多文化共生は、日本でも重要な課題と言われています。一方で、ナショナリズムや自国のアイデンティティを重視する動きも世界中で起きています。私たちはこれらの流れにどう対応したら良いのでしょう。実は、アルジェリアという国の歴史からヒントを得ることができます。

130年間、フランスの植民地下にあったアルジェリア

鵜戸 聡 北アフリカに位置し地中海に面しているアルジェリアは、古くから、ヨーロッパや中東とも関係が深い地域です。

 古代より、ベルベル人と言われる人たちが住んでいましたが、ローマ帝国の支配を受けるようになります。その後、アラブ人の進出もあり、16世紀にはオスマン帝国に組み込まれます。

 しかし、19世紀になるとフランスが進出するようになり、1830年に始まった征服戦争の結果フランスの植民地となります。その後、アルジェリアが独立を果たすのは、第2次世界大戦後の1962年なので、130年にわたってフランスの支配を受けることになるのです。

 その間、フランス人が移住するようになり、その数は100万人にもなります。彼らはフランス人街をつくったり、住民に対してフランス語の教育を推し進めます。

 その入植植民地のやり方は、戦前の日本が、台湾や満州、朝鮮半島の経営にあたって参考にしたモデルと言われます。

 1920年代になると、ナショナリズム運動が盛んになり、フランスによる弾圧を受けますが、1954年には武力闘争に発展します。それは、今日では、アルジェリア戦争と呼ばれています。

 こうして、武力闘争を通して1962年に独立したアルジェリアは、自分たちのアイデンティティを確立するにあたって、アラビア語の教育を進めます。

 ところが、日常会話のアラビア語はできても、読み書きを教えられる人がアルジェリアにはほとんどいなかったのです。そのため、エジプトなどから教師を派遣してもらわなければなりませんでした。

 実は、文語のアラビア語はコーランを読むことを基にしている、いわば古文のようなもので非常に難しいのです。

 また、話し言葉は、同じアラビア語と言いながら、地域によってまったく違う方言のようになっているのです。そのため、アルジェリアで話されているアラビア語は、アルジェリア・アラビア語と言われます。

 こうした経緯もあって、アルジェリアからフランス語が一掃されることはなく、その後も残ることになります。

 例えば、アルジェリアの大学など、高等教育はほとんどがフランス語で行われています。フランス語ができないと良い仕事に就けないという現実もあります。

 また、1960年代、70年代のフランスは高度経済成長の時代で労働力が足りず、アルジェリアからも相当の数の移民がありました。彼らは、当然、フランス語を喋り、フランス社会に融け込んでいったのです。

 独立後のアルジェリアの公用語はアラビア語で、2016年になってからベルベル語も認定されました。そもそも、この地域に住んでいたのはベルベル人ですが、いまでは山間部などに暮らすマイノリティとなってしまいました。とはいえ、首都アルジェやフランスにも多くの人口を擁しています。

 アルジェリアは、現実的には、アラビア語とフランス語のバイリンガル国家なのです。

 日本が撤退したあと日本語を排斥した、台湾や満州、朝鮮を身近に知っている日本人にとっては、アルジェリアは、経済はともかく、文化やイデオロギーにおいても、宗主国であったフランスの影響下にいまだにある国のように見えるかもしれません。しかし、実は、そう単純なことではないのです。

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