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「アメリカらしさ」に逆行する白人至上主義

明治大学 法学部 教授 矢ケ崎 淳子

アメリカではトランプ政権が誕生して以来、白人至上主義の集団が台頭してきたり、それに反対して多様性を認めようという人たちとの間で衝突する事件も起きています。その根底には何があるのか。世界でも特殊なアメリカの歴史をあらためて考えることで、見えてくるものがあります。

現在のアメリカらしさは、ここ50年ほどで築かれたもの

矢ケ崎 淳子 今年の8月に、アメリカ南部のバージニア州シャーロッツビルで、19世紀の南北戦争で奴隷制存続を支持した南部連合の英雄であるリー将軍の銅像を撤去することを決めた市議会に対し、それに抗議する白人至上主義団体と、その抗議に対抗する集団が衝突し、死者が出る事件が起きました。当初、トランプ大統領が白人至上主義を擁護するようにもみえるコメントを出したことに対して激しい非難の声が上がり、アメリカ社会の分断と対立の深さが浮き彫りになりました。移民を規制しようとしたり、民族差別を助長するようなトランプ政権を、アメリカらしくない、と感じる人が日本では多いと思います。それでは「アメリカらしさ」とは何なのか、あらためて考えてみましょう。

 アメリカは多民族からなる移民によって造られた国で、1776年に独立しました。しかし、建国以来、すべての人種・民族が平等であったわけではなく、多様性が認められてきたわけでもありません。人種や民族による差別を撤廃する公民権法が制定されたのは1964年で、今から50年ほど前のことです。アジアからの移民を禁止し、東欧や南欧からの移民に人数制限を設ける移民法が成立したのは1924年ですが、この移民法が廃止されたのは1965年です。第2次世界大戦中、白人と日系人を含む非白人の結婚は多くの州法で禁止されていましたが、連邦最高裁判所がそれを違憲と認めたのは1967年です。公民権法の制定からわずか44年後にオバマ政権が誕生したことは、本当に画期的なことです。その間、差別のない社会を目指してアメリカは大変な努力をしてきたと思います。例えば、かつてテレビドラマや映画の中で黒人は犯人や下働きの役ばかりでしたが、白人の部下がいる上司や、科学者・医者の役も与えられるようになり、1998年には黒人が大統領を演じる映画もできました。このような黒人と白人の平等な配役設定は、現実においても黒人がそのような役割を社会で果たすのが当然だという意識を流布させたという意味で教育的な効果があったと思います。今日、私たちがアメリカらしいと感じる多様性や、平等で自由な社会というイメージは、この50年ほどの間のアメリカ社会の大変な努力によって構築されたものといえるのです。

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