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地方自治の権限の拡大によって、現代型民主主義は進化する

大津 浩 大津 浩 明治大学 法学部 教授

近年、国と地方の対立がクローズアップされることがあります。EU離脱を決定したイギリスに対して、親EUを主張するスコットランドや北アイルランド。アメリカでは、トランプ大統領の政策に州が反対を表明することもあります。日本でも、米軍基地の辺野古移転を進める国に対して、沖縄県は抵抗し続けています。こうした国と地方の対立を、私たちはどう考えれば良いのでしょう。

国の方針に逆らっても、緊張緩和に繋がる自治体外交は合法

大津 浩 私は、憲法学が専門ですが、研究テーマのひとつに「自治体外交」があります。

 その中で注目しているのは、1980年代から始まっていた、日本海側各地域と、日本海を取り巻くロシアの極東地域、中国東北部、朝鮮半島などの自治体による「環日本海交流圏」です。

 この交流は、文化や経済の交流にとどまらず、日露沿岸市長会議によって、領土問題の話し合いにも発展しました。

 注目するのは、この交流が始まった当時は、まだ冷戦体制下で、西側の日本の自治体が、ソビエト連邦の自治体と交流したことです。

 国同士の関係が友好なとき、自治体が国の外交を補完するような活動を行うことは、日本でも一般に認められています。

 しかし、国同士の関係が悪化している状態にあるとき、自治体の独自の外交は許されるのか、というと、私は、国の外交方針に反しても、緊張緩和に繋がるような外交は合法であると考えています。

 つまり、冷戦下にあったソビエト連邦の自治体とでも、両国の緊張緩和に繋がる自治体外交であれば、許されるということです。

 しかし、この考え方は普遍的なものではありません。例えば、フランスやドイツなどヨーロッパでは、自治体が国に逆らうことは許されないという考え方が主流です。

 すなわち、国の外交に少しでも悪影響を及ぼすような自治体の活動は、違法ということになります。

 実は、日本の法律学や憲法学は、明治維新以降、フランスやドイツをベースにしてきました。なので、自治体は、国の方針や決定を実施する国の手足であり、それに逆らうような活動は許されない、という考え方が日本でも強くありました。

 しかし、戦後、日本はアメリカ型の地方自治の考え方を取り入れます。それは、自治体は、必ずしも国の言うがままになるのではなく、国の活動を全面的に妨害するのでなければ、ある程度逆らっても、地域と地域住民のために自治活動はできる、という考え方です。

 例えば、南アフリカ政府がアパルトヘイト政策(人種隔離政策)を行っていた時代、それでも、アメリカ政府は南アフリカ政府と友好関係を保っていました。

 しかし、アメリカの州政府や市町村自治体の中には、南アフリカ政府と取引をしている企業に対して、自治体による発注を禁止するような条例をつくったり、自治体職員の年金運用のための投資対象から外す処置を取るところが出ました。

 これに対して、企業は提訴したのですが、裁判所は、自治体の活動が、部分的、暫定的に影響を与える限りは許される、という判決を出しました。

 このようなアメリカ型の考え方を取り入れてきたからこそ、日本の自治体は、冷戦体制下のソ連邦の自治体との交流を進めることができたわけです。

 つまり、国際的な交流が進む方向であれば、国の許可などがなくても、自治体外交は合法である、というのが日本の考え方だと言えます。

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