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地方自治の権限の拡大によって、現代型民主主義は進化する

明治大学 法学部 教授 大津 浩

自治体への分権化は、民主主義の進化に繋がる

大津 浩 民主主義の概念は、国民主権から成り立っています。

 その国民とは地域の住民でもあります。すると、多様なルートを通じて自分たちの意思を表すことができる体制が必要です。

 例えば、国のAという政策に反対ではないが、県民としてはBの施策を支持するし、市民としてはCの方が良い、ということもあります。一人の国民として、市民として、多様な価値観があって当然なのです。

 だからこそ、私たちは選挙を通じて、国政にも自治体の政治にも意見するのです。

 しかし、そんな分裂のような状態を収拾するために多数決があると、私たちは思いがちです。

 より多くの人が賛成するひとつを正しいこととして、みんなが従うことが民主主義だと考えられていますが、しかし、実は、民主主義は単なる多数決ではないのです。

 討議民主主義とか、協議民主主義という考え方があります。

 それぞれの立場や、それぞれの考え方の人たちが主張しあい、それを議論し、ときには抵抗しあう、様々な「対話」を通して、ひとつの意見を正しいとするのではなく、それぞれの意見を汲んだ落としどころを協調して見つけようという考え方です。

 それでは、いつまでも決着がつかないという意見がありますが、本来の民主主義のあり方とは、そういうものなのです。

 実は、こうした対応に日本の国民性は適していると思います。

 例えば、国も沖縄県も米軍基地の移設問題で対立しているからといって、そのほかのすべてのことでも対立するようなことはありません。

 また、沖縄県はその抵抗手段が裁判で否定されると、それを受け入れて、また次の合法的な抵抗手段を考え、粘り強く抵抗します。

 ヨーロッパなどでは、対立すると、一方が勝つか負けるかの決着をつけるまで徹底的にぶつかり合ったり、テロや独立の議論にはしることが往々にしてあります。

 その点、日本の平和的な抵抗の仕方は、ある意味で日本の美徳と言えるかもしれません。

 もちろん他方では、日本のその国民性は、議論を避けたり、混乱は良くないからと、最初から自己主張をしない方向にもはしりがちです。

 この点では日本の国民性は変わっていかなければなりません。民主主義は、様々な立場や価値観によって自己主張することから始まるからです。

 国の言うことだからと、自治体は黙って従うのではなく、自治体の立場として主張することが、国民にとっても重要なのです。

 2000年代に入り、地方自治法の大がかりな改正が行われるなど、地方分権改革が進みました。

 その根底にあるのは、地方分権によって「対話型の立法権の分有」を進めることであり、それは、国民が、国や都道府県や市町村といった多様な場から、主権者である自分たちの意思を多元的に表すことです。それを、私たちは、ぜひ、実行しなければなりません。

 そもそも、日本国憲法は、国の立法権を原則優位としながらも、自治体にも立法権を分有させています。それが、憲法92条にある「地方自治の本旨」の意味であると、私は解釈しています。

 さらに言えば、日本の「対話型の立法権の分有」という仕組みによる多元的な民主主義のあり方は、平和的な対立を通じ妥協を模索する民主主義という点で、ある意味で世界でも先進的なものと言えるかもしれません。

 未だに自治体に立法権の分有を認めることのできないフランスやドイツの方が、日本から学ぶこともあり得ると思います。

 だから、沖縄の辺野古沖埋め立てをめぐりいくつかの訴訟で国側が勝ったからといって、その結果、沖縄側の主張の正統性と合法性がすべて否定されたと考えるのは、フランスやドイツ流の古い法解釈に囚われたものに過ぎません。

 どんなに難しくても、議論を尽くし知恵を出し合って、弱い側の立場を尊重した妥協の道を探ることこそが、日本型の新しい民主主義を生み出すうえで重要なことを知っていただきたいと思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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