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2021.12.08

旬のサンマを味わう幸せを将来世代に残すために

旬のサンマを味わう幸せを将来世代に残すために
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近年、国際的に漁業資源保護の意識が高まっています。しかし、漁業規制を定めても各国間で温度差があり、なかなか守られないのが実情です。その中で、EUでは共通漁業政策(CFP)が上手く運用されていると言われます。EUの政策とはどういうもので、それは、なぜ成功しているのでしょう。

漁業資源を保護するためには各国の合意が必要

佐藤 智恵 日本人にとって、サンマは秋を代表する味覚のひとつです。ところが、ここ数年、不漁が続いているという報道に触れ、不安に思っている人も多いのではないでしょうか。

 不漁の理由は大きくふたつあり、ひとつは、温暖化の影響で海水温が変わり、サンマの回遊ルートが変わったことと言われます。つまり、日本近海にサンマが来なくなったのです。CO2などの温暖化ガスの排出問題は、漁業にも影響を与えているのです。

 もうひとつは、サンマの国際的な漁業規制がまとまらず、いわば、獲り放題の状態になっていることです。実際、ここ数年、日本のサンマの漁獲高は減少が著しいのですが、2000年くらいから、中国や台湾は漁獲高を伸ばしているのです。

 それは、近海でのサンマ漁が主流の日本と違い、中国や台湾は公海で漁をしているため、サンマの回遊ルートが変わっても、それを追いかけて獲ることができるからです。

 中国や台湾がサンマを大量に獲るようになったのは、缶詰などの加工用にするためと言われていますが、この傾向は中国や台湾に限ったことではありません。ここ20年で、魚全体の消費量が世界的に増えているのです。

 こうした状況が続くとどうなるのか。日本人が旬のサンマを味わえなくなるようなことだけでなく、漁業資源全体の枯渇に繋がるのです。

 もちろん、国際社会もこうした状況に手をこまねいているわけではなく、漁業資源保護のための法整備を進めています。例えば、マグロの漁業規制は日本でも大きく報道されたので、ご記憶の方も多いと思います。

 サンマも、各国政府間で北太平洋の漁業資源保護を考える北太平洋漁業委員会で漁業規制が議論されてきましたが、なかなか全体の合意に達しなかったのです。合意に基づく国際枠組が取り決められなければ、資源管理を行うことは難しいのが現状です。

 さらに、合意がなされても、漁獲可能量をどのように設定するのか、さらに、それを遵守する体制が整えられていなければルールが形骸化しかねません。

 実際、違法、無報告、無規制を意味するIUU漁業が問題になっています。つまり、ルールを守らない船舶などが横行し、乱獲を続けているのです。

 北太平洋漁業委員会では、こうしたIUU漁業を行っている船舶リストを持っていて、見つけると取り締まりを行ったりする協定もつくられています。

 日本はそうした規制を厳格に遵守している国ですが、国によっては規制を守ることに熱心ではなく、管理がルーズになっているところもあるのです。

 しかし、漁業規制政策を速やかに取り決め、それを遵守する制度が上手く機能している地域があります。それが、EUです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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