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旬のサンマを味わう幸せを将来世代に残すために

佐藤 智恵 佐藤 智恵 明治大学 法学部 教授

EUの共通漁業政策を支える、環境に対する高い意識

 まず、EUでは、加盟各国が漁業に関する規制をEUレベルで定めることに合意していて、その権限をEUに委譲しているのです。それが共通漁業政策(CFP)です。

 例えば、EUによって、北海海域で獲るある魚の量が年間1万トンと決められます。すると、その魚を獲りたい加盟国間で、その1万トンを分け合うのです。ドイツの割り当てが1千トンとなれば、ドイツではそれを越えないように漁業関係者を管理しなければいけません。

 また、EUフィッシャリー・コントロールとしてEU機関の船も監視を行っており、不審な漁業があればすぐにチェックする体制になっているのです。

 ここまでは、国際ルールの仕組みとほぼ同じですが、EUでは、さらに、漁業資源に対するトレーサビリティシステムを導入しています。つまり、魚の認証システムです。

 まず、漁業従事者は魚を獲ると、その漁獲量だけでなく、どこの海域で、どういう漁法で獲ったのかを必ず記録します。そのログブックの情報は、水揚げされた魚を入れたパッケージなどにそのまま書き込まれます。

 その後、魚が加工工場に行ったり、小分けにされて市場で売られたり、スーパーで小さなトレーに乗せてラップをかけて店頭に並んでも、その情報は伝え続けられるのです。

 すなわち、魚の加工品のパッケージに原材料の情報として印刷されていたり、スーパーで売られている小さなトレーには情報が書き込まれたシールなどが貼ってあります。市場で魚を売っている人は、魚の情報を確認して買いつけているので、市場の客が質問すれば、すぐに答えられます。

 つまり、違法な漁業による魚は流通できないシステムになっているのです。

 また、消費者も、魚の情報があることによって安心して買うことができます。つまり、漁業資源の保護に関して、消費者の意識もとても高いのです。

 EUのこのCFPが効果的に機能している背景には、EUでは環境問題に対する意識や関心が高いことがあります。

 漁業問題も食の問題というだけでなく、漁業資源の問題であり、それは環境政策に関わることと捉えられているのです。

 乱獲して漁業資源を枯渇させることは、サステナビリティに反することであり、ダイバーシティに反することにもなる、という意識です。

 私たち日本人の身に振り返ってみれば、江戸時代には庶民の食べ物として広まっていたウナギが、いまでは贅沢品です。長年、秋の味覚として親しまれてきたサンマも、将来どうなるかわかりません。

 それは、私たちの伝統的な食文化が途絶えることに繋がるとともに、地球に生きる生物を衰退させ、海の多様性を失わせることでもあるのです。

 自然と共に生きる文化を育んできた私たち日本人も、あらためて、EUのような取り組みに目を向ける必要があると思います。

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