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ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

菊地 端夫 菊地 端夫 明治大学 経営学部 准教授

私的政府と公的政府領域の交錯による価値創造

 しばしば、私的政府が強まると、公的政府が弱まってしまうという議論があります。しかし、必ずしもそのようなことはありません。確かに、民の力を取り入れていくには、やり方が機能不全になりつつある官が、民の発想を評価や判断してはダメでしょう。民に任せるところは任せるべきです。その任せる仕組みを、官民が一緒になって考えれば良いのです。例えば、大阪で、大阪版BID(Business Improvement District:ビジネス活性化地区)という試みが始まっています。また、大きな公園の管理を民間事業者に任せるというプロジェクトがあります。市は管理委託費を1円も払いません。しかし、民間事業者は公園の管理をするだけでなく、公園内にオシャレなカフェやレストラン、ショップを運営したり、様々なイベントを企画して、公園の利用価値を高めつつ、収益を上げるのです。もし、民間事業者が店舗の運営だけに力を入れ、芝生の手入れや清掃などの公園管理を怠ると、公園の価値は向上せず、収益は上がらなくなります。つまり、公共空間の価値を高めていくためには、利用者側の声や利益を反映させることが必要なのです。そのためには、それぞれのステークホルダーの利益のバランスを考え、官と民の領域が交錯する仕組みをつくっていくことになるわけです。官に任せっきりでも、民が自由にやりたい放題でも、成功しないのです。

 また、私的政府ができることによって、その分だけ公的政府はサービス供給に関わる責任が小さくなります。先の例では、市のこれまでの公園管理費負担はゼロになります。また、例えば、自治的に安全管理を行うコミュニティが増えれば、警察や治安維持にかかる負担も費用も低くなります。ところが、そうしたコミュニティに住む人も、それ以外のところに住む人も、払う税金は同じです。すると、多角化戦略を行う企業の事業群の組み合わせをいうところの事業ポートフォリオでいえば、公的政府にとって、税収は増えてもサービス供給の需要は低い私的政府のあるコミュニティは、「金のなる木」という位置づけになるわけです。公的政府は、税収の分配を、もっと必要としているところに回すことができるようになります。

 先にも述べたように、日本ではゲーテッド・コミュニティはつくれません。しかし、都市部で増えているオートロック付きのマンションは、セキュリティの点でいえば、垂直に伸びたゲーテッド・コミュニティです。そこに、共有空間や施設の拡充と、その自治管理の意識と仕組みを高めれば、私的政府のスタイルに近づくと考えられます。また、地方で発達している伝統的な地縁型コミュニティは、あまりにも自己犠牲型のボランティアを基盤としているために、その多くが疲弊してきています。しかし、大阪版BIDで試みているような事業性を取り入れることができれば、私的政府として、公的政府との領域の交錯がもっと可能になるのではないかと考えます。

 ゲーテッド・コミュニティを、その外観上の形態から単純に排他的とか差別的と捉えるのではなく、また、私的政府といえる自治管理を、公的政府の力を弱らせる仕組みと捉えるのではなく、その裏側にある実態に目を向け、これからの日本社会を考えるヒントとしていく考え方が、いま、本当に必要だと考えます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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