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2017.03.29

「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

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日本に定住を進めるならば、様々な可能性を考えよ

根橋 玲子 こうした日系人労働者の問題は、リーマンショックに続き2011年の東日本大震災により帰国する者が増えたことで、うやむやになったともいわれます。もちろん、日本に残った日系人も多く、彼らが以前から集住する地域では、自治体によって問題解決の努力や多くの取り組みがなされてきましたが、日本全体を見渡すと、まだまだ課題は多いと考えます。

 「留学生30万人計画」は、日系人労働者で露わになった、こうした問題を解決しようという意図もあります。しかし、日本語や日本文化に対する理解を深めれば、それですべてが解決するわけではありません。就職した留学生たちに話を聞くと、学生時代は良かったものの、日本の企業に属してみると、その習慣や風習に戸惑うことがいろいろあると言います。また、留学生に多い中国人には、日本人のように一社に長く勤める考え方がないので、受け入れる企業側にも戸惑いがあるようです。

 さらに、今後、大きな問題となりそうなのが、結婚や出産、そして子どもの教育の問題です。日本で就職した留学生同士が結婚したとき、留学生と日本人が結婚したとき、彼らはどこで暮らしていくのか。また、子どもが産まれたら、その子はどこで育てるのか、どこで教育を受けさせるのか。さらに、中国には、親の老後は子どもが見る習慣が日本よりも強くあります。本人が日本で働き続けたいと思ったとき、両親をどうするのか。現状では、呼び寄せは制度的に難しいですが、呼び寄せることができるようになったとしても、中国人の高齢者が日本社会で暮らせるのか。こうした問題は、個人だけで解決できないこともあります。そのとき、留学生たちはどのような選択をするでしょうか。日本にはいられないと思う人もいれば、日本にいたくても帰国、もしくは他の国に行かざるを得ない人も出てくるでしょう。こうした様々な問題はすでに起き始めています。さらに、次々と課題が明らかになるのは、もう間近に迫っています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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