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「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

根橋 玲子 根橋 玲子 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授

留学生を受け入れる私たちに求められる“責任ある寛容性”

 例えば、ヘイトスピーチに代表されるように、外国人を一方的に排除する考え方も、外国人の受け入れを楽観的に肯定することも、私はおかしいと思っています。外国人を受け入れるということは、一緒に暮らす仲間として受け入れることであり、そのためには、互いの問題を一緒に考えていくことが必要です。それは、国とか日本国民という立場でではなく、同じコミュニティの市民として一緒に考えるということです。欧米では、シティズンシップ・エデュケーション(Citizenship Education 市民性教育)という考え方があります。市民として、社会で役割を果たせることができるような教育を行うということです。この citizenshipは、以前は「市民権・公民権」などと訳されていましたが、いまは、「市民社会ですべきこと」といった広い概念でとらえられるようになっています。外国人との共生も、このシティズンシップの観点からとらえることができます。人を外国人とか、○○人とラベルを貼って見るのではなく、同じコミュニティの一員として自然に接することができるようになるために、こうした教育を行うことが、今後、重要な取組みになると思います。

 留学生が、期待通りの人材になれば、それで良し、ではありません。留学生たちが日本人と区別されず、選択肢が平等に同じように与えられるよう、政策だけでなく、それを可能にする市民社会を構築していくことが、留学生をはじめ外国人を受け入れる私たちの責任だと思います。それが、“責任ある寛容性”です。それを実践する社会を実現することが、留学生それぞれが、安心して日本に定住する選択肢を可能にしていくことにつながると考えます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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