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「教育は唯一奪われないもの」パレスチナ難民の思いに応える

岸 磨貴子 岸 磨貴子 明治大学 国際日本学部 准教授

子どもたちの世界を広げた日本とパレスチナの国際交流学習

 こうした取組みのひとつとして、インターネットを活用して日本の学校とパレスチナの学校をつなぎ、国際交流学習を行いました。日本とパレスチナの子どもたちが情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)を活用して交流しながら、一緒に絵本や巨大壁画を創る活動を行ったのです。すると、パレスチナ難民の子どもは、「自分たちが伝えたことで、相手が知って喜んでもらえることが多くあるんだ」とか、「パレスチナの文化はこんなにいろんな人たちに関心をもってもらえるんだ」ということを知り、とても大きな自信を持ちました。また、自分たちとはこれまで全く接点のなかった違う文化の人(日本人)に自分たちのことを分かってもらうために、自分たちの「当たり前」を問い直すようになりました。これは、彼らにとってものすごく大きな経験です。

 実は、シリアにいるパレスチナ難民のリテラシーはとても高いのです。それはUNRWAが提供する教育の質が高いからというのもありますが、それだけではなく、パレスチナ難民が教育を何よりも重視していることも大きな理由です。家も、家族も、土地も、財産も奪われた経験をもつ彼らは、教育だけが誰にも奪われない財産と信じています。大人たちは、子どもたちは幸せに生きて欲しいと願います。教育によって、子どもたちがこの複雑な社会を生き抜き、少しでもより良い未来の可能性を創り出すことができると考えます。ところが子どもたちは、難民キャンプというかなり狭い社会の中で生きていきます。すると、どんなにたくさんの知識を学んでも、その小さな社会の中の規律を疑うことなく当然のこととして受入れるようになります。こうすること、こう考えるのが当たり前、と常識にとらわれて、新しい考えや行動を創り出すことがなかなかできませんでした。そのような状況の中、日本という異なる文化、価値、言葉、人に出会うことで、いままで当たり前と思っていたことを問い直し、違った見方や考え方で日常の当たり前を捉え直すにようになりました。日常に植えこまれた日々の思い込みから解放され、未来の選択肢を広げ、自分にできること、やりたいことの可能性に気づき、未来への選択肢を広げることにつながったのです。

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