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トランプ氏の選挙モデルは日本のネット選挙に応用できるか?

清原 聖子 清原 聖子 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授

選挙の争点にはアメリカ社会の深刻な分断の構造があった

クリントン候補の集会会場に入るために並ぶ支持者たち。約3000人集まったという。(2016年8月1日、ネブラスカ州オマハ)
クリントン候補の集会会場に入るために並ぶ支持者たち。約3000人集まったという。(2016年8月1日、ネブラスカ州オマハ)
 もちろん、トランプ氏の勝利はソーシャルメディアの活用だけでなく、クリントン氏との対決の構図の中で、有権者がインサイダーよりもアウトサイダーを求めていたことや、カトリックやエバンジェリカルがリベラルなクリントン氏ではなく、保守のトランプ氏を支持したという点も見逃せません。日本人の感覚では、キリスト教徒がトランプ氏を支持するというのは不思議に思えますが、そこには、2016年の2月に欠員が出た最高裁判事を選出するのが次期大統領、というタイミングが重なったことが大きく影響しています。中絶容認問題やLGBTの結婚問題などもあり、これ以上リベラル派の判事を選出されたくないキリスト教徒にとって、選択肢は、熱心に教会に通うリベラルなクリントン氏ではなく、「神を信じているけれど、神に許しを乞うたことはない」と語る保守のトランプ氏だったのです。

 今回の大統領選挙は、アメリカ社会の分断の度合いが深刻であることを露呈させた選挙でした。その分断は、経済における格差の問題や、政治におけるエスタブリッシュメントと一般民衆だけでなく、リベラルな価値観と保守的な価値観にも及んでいるのです。それは宗教上の倫理観の問題だけではありません。例えば、オバマ大統領が進めようとした銃規制ですが、それに賛成するのは東海岸と西海岸の地域で、今回の選挙でクリントン氏が票を獲得した地域と重なります。それに対して、中西部は銃規制に反対の地域で、それはトランプ氏が票を獲得した地域と重なるのです。

 次期大統領にどちらが就いたとしても、この分断したアメリカをまとめていくのは大仕事です。いまだに反トランプの気運があり、そのなかでトランプ氏は選挙期間中に発信していた過激な政策を軌道修正し始めましたが、今度はそれに対してトランプ支持者から反発が起きています。政界や経済界、ジャーナリストたちは一時のヒステリックな状態から落ち着き、トランプ氏の手腕を見守ろうとする方向になっていますが、国民の気持ちは簡単には落ち着きません。ポピュリスト、トランプ氏の手腕がこれから試されることになります。

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