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求められるグローバル人材育成のために

福宮 賢一 福宮 賢一 明治大学 名誉教授(元学長・商学部教授)

「語るべきもの」を持ち、「考える国」へ

福宮賢一学長 明治大学のみならず各大学は、グローバル人材育成のために多くのプログラムを用意しています。確かに、語学を習得することは非常に大切です。しかしながら、その大前提として「語るべきもの」を持つことが何より重要です。語学に堪能になっても「語るべきもの」を持っていなければグローバル人材とは言えないのではないでしょうか。「語るべきもの」を持つために、徹底して思考力を鍛えるのが大学という場です。だからこそ、学生諸君にはひたむきに勉学に取り組んで欲しいと思います。「語るべきもの」があり、伝えたい想いがあれば、必然の成り行きで語学を習得するはずだと考えます。
また、グローバル人材育成のすべてを大学だけが担うものではないと考えています。社会の機運として、グローバル人材を育成すること、その必要性を人々が認識することが必要だと思います。そうした機運醸成のためには、開かれた社会であるべきです。国際化が叫ばれていても、日本は未だに閉鎖的な社会に留まったままではないでしょうか。たとえば、少子化に伴う移民問題があります。単に労働力確保の問題ではなく、移民を受け入れ、彼らと共生していく多文化共生社会を考えている人はまだ多くないと思われます。移民受け入れの問題だけでなく、世界のグローバル化に対して日本はどう対応していくべきなのか。精神性においても、思考の深度においても、日本は開かれ成熟した「考える国」にならなければならないのではないでしょうか。それこそが、本質的な意味での日本のグローバル化でもあるでしょう。今こそ、社会と大学が連携し、次代を担う若者たちを育成していく時だと考えます。

※掲載内容は2014年12月時点の情報です。
>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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