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「スポーツ共創」の時代

明治大学 商学部 准教授 澤井 和彦

2020年の東京オリンピック・パラリンピックが間近になり、スポーツに対する注目が高まっています。一方、人々のスポーツ実施率についてみると、ウォーキングや軽体操などの「エクササイズ」は高齢者の実施率が伸びていますが、野球やバレーボール、テニスといった、いわゆる「競技スポーツ」の実施率は下がっているか、長期的に低迷しています。笹川スポーツ財団の「スポーツライフデータ」によると、現在、競技スポーツをやりたいと思っているのは成人の約3割ほどで、そのうち実際にやっている人は1割程度です。なぜ、スポーツ実施率は伸びないのでしょう。

スポーツの実施率が向上しないのは、
魅力的な競技スポーツが十分に存在しないから

澤井 和彦 近代スポーツは、日本では明治以降、政策的に学校教育に取り入れられたところから発展してきました。地域のスポーツ活動も「社会体育」と呼ばれ、もっぱら「国民の心身の健全な発達と明るく豊かな国民生活の形成」に対する合目的な活動とされてきました。

 しかし、「スポーツ」の語源はラテン語のデポルターレ(deportare)で、それが近代スポーツの母国であるイギリスで最初に備えた意味は「愉快な娯楽・慰み・気晴らし」だったと言われています。

 なのでイギリスでは、われわれ日本人が「Sport」と聞いて思い浮かべる意味内容よりも、かなり広い範囲のものを思い浮かべると言われています。例えば、カードゲームやボードゲームなどのいわゆる「マインドスポーツ」も、立派な”スポーツ”になります。

 一方、近代スポーツが「愉快な娯楽・慰み・気晴らし」から離れてどんどん合理化・組織化され、競技志向に偏っていくのに対し、20世紀後半以降には勝敗にこだわらないでレクリエーションとして気軽に楽しむことを目的とした「ニュースポーツ」というスポーツがつくられるようになります。例えばゲートボールやグラウンドゴルフ、フライングディスクなどがそうです。

 同時期には障がい者のリハビリテーションやレクリエーションのための「障がい者スポーツ」もつくられてきました。

 21世紀に入ってからは若者カルチャーの中からスノーボードやフリースタイルスキーといった「エクストリームスポーツ」がつくられて盛んになります。

 このように”スポーツ”は、人々や社会のニーズに合わせて常につくられ、あるいは”hack”(改変、改良)されてきました。また既存の伝統的近代スポーツも、時代に合わせて常にルールが変更され、改良が加えられてきています。

 しかし、それでも競技スポーツの実施率がなかなか向上しないのは、そうした新製品の開発、改良が、人々のニーズに追いついていないことを示唆しているように思います。

 つまり、スポーツの実施率が向上しないのは、魅力的な競技スポーツが十分に存在しないからかもしれません。

 野球やサッカー、バスケットボールなど、それなりに魅力的で多くの愛好者がいますが、その訴求力には限界があるのです。

 われわれは「スポーツの普及」というと既存スポーツの実施率を増やすことを考えがちですが、スポーツはこれまでその種目数を増やすことによっても発展してきたことを考えると、さらに新しい種目、コンテンツが必要ということかもしれません。

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