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人間と社会を繁栄させるICTの開発と利用 ―求められるポリシーの確立―

村田 潔 村田 潔 明治大学 商学部 教授

技術の両面性

村田潔教授 今日の情報通信技術(ICT)の進展は、私たちの日常生活に様々な利便性を提供している。しかし、その一方で、それに伴う目に見えないリスクも増大している。
 私が専門としている情報倫理という研究分野は1980年代の半ばから本格的な研究が始まり、ICTの開発と利用がもたらす社会的なリスクを分析し、それに対応するためのポリシーを提案することが目的とされている。現在この分野で中心的に活動をしている研究者は世界でもおよそ200人ほどである。情報倫理研究の特徴は、ICTという技術そのものではなく、その開発と利用がもたらす人間と社会への影響に焦点を当てることにある。技術には肯定的な側面だけではなく、必ず否定的な側面もあり、そのため技術と人間ならびに社会のあり方は実に密接に結びついている。とりわけICTはマルチパーパス技術なので、それをどのように使うことが、人間と社会にとってより良いのかを常に吟味していかなければならない。この時、「良い」という価値判断をどのように行っていくかを考えるにあたって、倫理的に考えるということがどうしても必要になる。
 例えば情報セキュリティー技術は、個人情報や企業機密を守るという有益な方向に使える一方、犯罪組織の情報交換やアンダーグラウンドの取引を隠ぺいするための道具としても利用できる。したがって犯罪対策とセキュリティー保護、テロリズム対策とプライバシー保護など、社会的に望ましいこと同士が対立する問題状況について考えなければならなくなる。

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