ネット経済における通貨としての個人情報
今私たちは、インターネット上で個人向けに特化されたサービスを無料で受け取ることができる。しかし、ここで「無料」の意味を考える必要がある。例えば、ソーシャルメディアの画面に表示される広告は、ユーザーが入力したプロフィールや記事、写真などの内容を解析してそのユーザーに適したものが示されることになる。個人の関心をより的確に惹きそうな広告を自動的に提示しているのである。
ネット上では多くの便利な無料サービスが提供されている。しかし、こうしたサービスを提供する側の目的はどこにあるのか。ビジネスである以上、どこかに利益に繋がる仕組みがなくてはならない。その一つが広告であり、広告主にとってソーシャルメディアを魅力的な媒体にしているのが、こうした個人情報の積極的利用なのである。無料というのは、従来の意味での通貨、つまり金銭は要求しないというだけで、替わりに個人情報というネット経済における新しい通貨と無料サービスとを交換しているのだ。
情報間の関連性が明確な形で大量の個人情報が集積されれば、より精度の高いマーケティングに利用できる。そのため、ソーシャルメディアは、ユーザーに向けて、「皆さん個人情報をどんどん公開してください、シェアしてください」と呼びかけている。ソーシャルメディアの基本設定も、「オープンで自由かつ正直なオンライン文化」を全面的にサポートするようになっている。しかも、ユーザー自身がオープンな利用形態を選んだことになっている。ソーシャルメディアの利用の仕方をクローズドにするという設定機能は、通常目立たないようにしてあり、これに気づかないユーザーも多い。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。