マイナンバーに潜む問題
2013年5月24日の参院本会議で「マイナンバー」制度の関連法が可決、成立した。
マイナンバーの利点とされているのは、1.公平な税制への貢献、2.社会保障給付の効率化、3.災害対策などである。確かにこれらの政策を実現することにはメリットがある。また、マイナンバー制度には経済効果があるとして、ほとんどのマスメディアも歓迎している。しかし、陰の部分も考慮しておく必要がある。国民一人一人に番号が付けられその番号に多くの情報が紐付けされていったときに、使い方によっては恐ろしいことが起きないとも限らない。
官僚にとって30年来の懸案事項だったマイナンバー制度が法制化された背景には、若い人たちがあまり政治に関心がないことに加え、マスメディアによってその利点だけが強調され、このシステムを社会的に受け入れる素地ができてきたということがある。しかしICTの利用によってもたらされるリスクには、利用の当初では大きな問題として意識されないものが多く、しかも10年、20年経って、初めて非常に危険なものだと気づいたとしても、そのときにはすでに広く社会に浸透し、取り返しがつかなくなっている可能性がある。ICTの利用に関わるリスクを先回りして考えておくことは社会にとって非常に重要なのである。
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