明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

「東芝の不正会計」からガバナンスを再考する

明治大学 経営学部 教授 小俣 光文

2015年6月の株主総会で「不適切会計」があったことを認めた東芝。その後、2200億円にも上るといわれる粉飾が明らかになるにつれブランドイメージは毀損、業績は悪化し、2016年3月期は純損失7100億円に達する見通しとなりました。このような事態に至った背景には何があったのでしょう。

コーポレートガバナンス先進企業が起こした「粉飾決算」

小俣 光文 2003年に委員会設置会社に移行した東芝は、コーポレートガバナンスの先進企業と見なされていました。当時の委員会設置会社には、「指名委員会」、「監査委員会」、「報酬委員会」の三つの委員会を置くことが義務づけられていました。各委員会は取締役3名以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければなりません。各委員会の役割は、指名委員会が、取締役の選任や解任に関して株主総会に提出する議案内容の決定。監査委員会が、執行役および取締役の職務の監査と監査報告の作成。報酬委員会が、役員報酬などの内容の決定です。指名委員会や報酬委員会は、東芝が起こしたいわゆる「不適切会計」、つまり粉飾決算などを直接チェックする機関というわけではありませんが、複数の社外取締役を置くことによって、企業経営を律し、活性化させる仕組みなのです。

 東芝が「不適切会計」を発表した当初は、東芝はコーポレートガバナンスが機能しているからこそ、粉飾決算を自ら公表することができた、と思った人も多かったのではないかと思います。しかし、その後、発覚の発端は証券取引等監視委員会への内部告発であったことがわかり、さらに、東芝が設置した第三者委員会の調査報告により、2008年度第1四半期から利益の過大計上が行なわれ、しかも経営トップを含めた組織的関与であることがわかりました。

 なぜ、監査委員会も監査法人も気づけなかったのか。やはり、粉飾の手口が巧妙であったことが上げられます。そのひとつが、「循環取引」を利用した粉飾です。決算直前になると、資本関係のない取引先のパソコン組立て会社に部品などを高く売り、決算後に高い部品代を含めた完成品を買い戻すという手法です。結局、すぐに赤字なってしまうのですが、決算時には、通常より利益が上がっているように見せることができるわけです。工事進行基準の進捗率を操作して収益を前倒し計上するという手口や、取引先に請求書の発行を遅らせるよう要求して費用の計上を遅らせる手口、在庫の評価損を計上しない手口なども使われていました。こうした粉飾は、本来は監査法人が厳しくチェックしなければなりません。なぜ発見できなかったのかは、今後、検証が進むものと思われます。

ビジネスの関連記事

ブランド価値の向上が日本企業の課題

2020.7.8

ブランド価値の向上が日本企業の課題

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 原田 将
「経営を見える化」する力が「ビジネス」を変える

2020.7.1

「経営を見える化」する力が「ビジネス」を変える

  • 明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
  • 青沼 君明
書店が本の価格を決めたら、本はもっと売れる!?

2020.6.10

書店が本の価格を決めたら、本はもっと売れる!?

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 浅井 澄子
より良い労働条件獲得のために、ストライキよりさらに有効なこと

2020.5.13

より良い労働条件獲得のために、ストライキよりさらに有効なこと

  • 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授
  • 野川 忍
新しい価値を創出するイノベーションを育てるのは、私たち自身

2020.3.11

新しい価値を創出するイノベーションを育てるのは、私たち自身

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授
  • 山内 勇

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.07.08

ブランド価値の向上が日本企業の課題

2020.07.01

「経営を見える化」する力が「ビジネス」を変える

2020.06.24

子どもの権利を見落とす/教師の権利も見落とされる「ブラック」な学校

2020.06.17

インテリジェンス研究:安全と権利自由の「両立」をいかにして実現するか

2020.06.10

書店が本の価格を決めたら、本はもっと売れる!?

人気記事ランキング

1

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

2

2020.07.08

ブランド価値の向上が日本企業の課題

3

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

4

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

5

2017.06.14

現代の経済学では説明できない!? 縄文時代の持続可能性社会

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム