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高信頼性組織とは何か ―失敗が許されない組織の条件―

中西 晶 中西 晶 明治大学 経営学部 教授

「使っていて当たり前」のサービスを取り巻く危機

中西晶教授 私たちが、24時間365日、使っていて当たり前と思うようなモノやサービス、いわゆるエネルギー、上下水道、情報通信、交通などのライフラインを提供している人や組織あるいは産業が、私の研究の対象である。
 現在、原子力発電所の問題をはじめ、サイバーセキュリティ、インフラの老朽化とそれに伴う事故などライフラインの危機管理が問われている。そのため、安全・安心・セキュリティに関して、事象(何が起こっているのか)、言説(どのように語られているのか)の観点から、高い安全性、組織の信頼性をつくっていくためのマネジメントや人、あるいはシステムとはどのようなものなのかを明らかにしていくことに注目している。言うならば、「高信頼性組織としての条件」が私の研究テーマである。

立場によって、ものの見え方は異なる

 「高信頼性組織(High Reliability Organization)」という概念は、1980年代に米国で誕生した。24時間365日、使っていて当たり前と思うようなモノやサービスを提供する組織や産業にとっては重要な考え方であり、サイバーテロや事故、不祥事などを予防するためにも有効な手法であるが、日本においては浸透に時間がかかっている。
 近年「安全文化」という言葉が注目されているが、これは組織全体ではなく、現場主導のものと考えられてきた傾向がある。たとえば近年の原発事故に対しても、組織としての安全文化が構築されていなかったことが指摘されている。これは安全文化が、現場である発電所には浸透していたものの、経営層や営業所を含む組織全体には浸透していなかったことを意味する。もちろん一人ひとりが安全は大事であるという意識は持っていたに違いないが、立場や役割によって見え方が異なっていたり、あるいは、ほとんど認識されていなかったりすることもあり得る。つまり、人によって見方は違うということに気を付けなくてはならない。高信頼性組織を実現するためのスタートポイントは、まさにそこであり、たとえ一つの組織の中であっても立場によって見方が異なるということを前提に、現場や経営層が一体となり、組織としてのマインドや文化を醸成していくことが重要になる。
 また、マニュアルは大事だが、その背景になぜそのマニュアルが作られたのか、ルールの背景にあるものは何なのか、それを理解した上で高いマインドを持って仕事をしないと周りの状況が見えなくなり、かえって危険な状況に陥ることがあることも認識しておく必要がある。
 こうしたことから、高信頼性組織を考えるときは、組織行動、組織マネジメント、組織文化の3層構造で考えることを提案している。

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