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「東芝の不正会計」からガバナンスを再考する

明治大学 経営学部 教授 小俣 光文

同じく危機に陥った日立との違い

小俣 光文 なぜ、東芝はこれほどのダメージを負う不正に手を染めてしまったのでしょう。2008年のリーマンショックや、2011年の東日本大震災以降の世界的な反原発の高まりなどにより、業績が悪化したことが原因でしょうか。しかし、同じく業績を悪化させ、2009年に約7900億円の赤字を出した日立製作所は、その後、見事に回復し、2015年には過去最高の営業利益を上げています。日立製作所も東芝と同じくコーポレートカバナンスの先進企業です。では、東芝との違いは何だったのでしょう。

 日立製作所は過去最大の赤字を隠すことなく公表し、そこで危機感をもち、社内の構造改革に着手しました。その改革のひとつが、外国人取締役の選任により多様性を取入れることであったといわれます。一般に、コーポレートガバナンス(企業統治)というと、コンプライアンス(法令遵守)の側面ばかりに目を向けられがちですが、政府と東京証券取引所が策定したコーポレートガバナンス・コードでも、その狙いは企業の収益力の底上げであり、企業の成長戦略の一環として捉えられています。短期的な利益にのみ着目するのではなく、企業を成長させ、長期的な成功に結びつけるためにコーポレートガバナンスを機能させていくことが重要なのです。日立製作所が外国人取締役を選任したのは、第三者の目で組織を見ることで組織を活性化させていく戦略だったのです。実際、取締役会は一変し、議論が伯仲するようになり、ときにはCEOが答えに窮するようなこともあったといわれます。逆に、上司の意向に逆らうことができない企業風土が強いといわれる東芝は、トップが、組織を守り自らの評価や既得権益を守るためなら、それが不正行為であっても構わないという暴走に走ったとき、それを止めることができませんでした。委員会を設置し、社外取締役を選任していても、本当の意味でのコーポレートガバナンスの理解がなかったため、その仕組みを機能させることができなかったのです。結果、組織を守るどころか、重大な危機に陥れることになっています。

 不利な情報であっても隠蔽することなく真実な情報を開示することで、組織の構造改革が推進され、企業の活性化と成長につながるケースは、2011年に不正会計が公表されたオリンパスでも見られます。10年間隠蔽され続けた不正を公表したのは、新しく社長に就任したイギリス人でした。「tone at the top」という言葉があります。経営トップの倫理的姿勢によって生まれる社風のことです。日立製作所やオリンパスの例を見てもわかるように、それは企業を守るだけでなく、企業価値を高めることにつながっていくのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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