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BOPビジネスが、日本を救う ―グローバル・マーケティングからの提言―

大石 芳裕 大石 芳裕 明治大学 名誉教授(元経営学部教授)

「BOP」へのマーケティング

 日本企業のいくつかの例を紹介したが、残念ながら日本企業全体としては「BOPビジネス」への関心は低水準なのが現状だ。日本企業が「BOPビジネス」にさほど関心を寄せないのは、途上国へのアプローチが欧米各国と根本的に違うからである。
途上国での日本製品は「高品質だが高価格」というのが一般的な評価だ。したがって日本製品を購入するのは「TOP(Top of the Pyramid)」(富裕層)が中心になる。だがこの層はパイが小さい。ボリュームゾーンである「MOP(Middle of the Pyramid)」(中間層)に支持される必要があるが、日本の企業の多くは、いずれ途上国は経済成長を経て豊かになり、日本製品を求める人が増えると踏んでいる節がある。しかしその“上から目線”ともいうべき視点では、途上国ビジネスは成功しない。「MOP」への戦略を「BOP」から、すなわち“下から目線”で取り組む必要がある。
たとえば、ユニリーバというヘルスケア企業は、インドの低所得者層(「BOP」)に対し、下痢疾患防止のための洗剤を学校で子供達を啓蒙することで普及させている。同社は少量の小袋に分けて安価で提供することで購買障壁を解消し、多くの人々が少しずつ毎日買うという大量消費の構図で市場を創造した。同時に、その販売に若い女性(シャクティ・アマ)を活用することによって所得向上をもたらすとともに、彼女たちの地域における社会的地位を高めた。このようにして形成されたユニリーバへのブランド・ロイヤルティは、彼らが貧困を脱し「MOP」層になっても変わらないと思われる。日本の途上国への海外進出は、工場建設による現地生産やTOP・MOP市場開拓が主である。日本企業が「BOPビジネス」に取り組んでいる例は上記の他にもいくつかあるが、企業活動における世界の潮流ともいうべき「BOPビジネス」に日本企業は遅れている。

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