明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

モノ言う株主の台頭 ―会社法改正で変わる企業統治―

河内 隆史 河内 隆史 明治大学 名誉教授(元専門職大学院 法務研究科教授)

米国スタンダードとモノ言う株主

河内隆史教授 私は会社法、金融商品取引法、商品先物取引法などを研究分野としているが、今まさに国会で会社法改正法案が審議中であり、今回の法改正が意味することについて考察してみたい。
日本では従来、商法や有限会社法、監査特例法等の総称として会社法が用いられてきており、単一法典は存在しなかった。2005年にそれらを統合、再編成する法律として「会社法」が制定され、翌年施行された。今回の改正はおよそ10年ぶりということになるが、その背景には日本企業の国際化の進展がある。国際化に伴い、ファンドなど外国人株主の割合も増えてきている。
そこで要求されるのは、単に業績の向上に留まらず、コンプライアンスやガバナンスの実効性の確保である。たとえば、それは昨今の株主総会からもうかがわれることだ。かつて株主総会は“シャンシャン総会”と揶揄されたように、特に質疑応答もなく短時間で終了するのが定番だった。しかし現在は“モノ言う株主”が登場することも少なくなく、株主は発言力を強めつつある。また、株主総会は、環境問題など社会の声を訴える場としても機能し始めている。
日本企業の国際化とは、別の視点に立ってみると、米国でスタンダード化される企業経営のあり方を持ち込むことでもある。たとえば、日本の企業は従来、配当性向は高くなかった。利益は設備投資や内部留保に振り分けられることが多く、株主へ利益還元(配当)するという考えは希薄だった、しかし米国の株主は元来配当を求める傾向が強い。ファンドなどの外国人投資家を株主に持つ企業などでは、利益還元が要求されることが多くなりつつある。国際化がもたらした、変化の一つであろう。

ビジネスの関連記事

ポストコロナ時代における地方金融機関の「新ビジネス」とは

2024.3.21

ポストコロナ時代における地方金融機関の「新ビジネス」とは

  • 明治大学 商学部 教授
  • 浅井 義裕
ESGやサステナビリティだけ分析しても意味がない?

2024.2.8

ESGやサステナビリティだけ分析しても意味がない?

  • 明治大学 商学部 教授
  • 奈良 沙織
老舗ブランド経営~日本の持続可能性に向けて

2023.11.30

老舗ブランド経営~日本の持続可能性に向けて

  • 明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
  • 首藤 明敏
なぜ「哲学的思考」はビジネスで活きるのか

2023.10.25

なぜ「哲学的思考」はビジネスで活きるのか

  • 明治大学 経営学部 専任講師
  • 畑 一成
サービスの発想はサステナビリティに通じる

2023.7.19

サービスの発想はサステナビリティに通じる

  • 明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
  • 戸谷 圭子

新着記事

2024.03.21

ポストコロナ時代における地方金融機関の「新ビジネス」とは

2024.03.20

就職氷河期で変わった「当たり前の未来」

2024.03.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.03.13

興味関心を深めて体系化させれば「道の駅」も学問になる

2024.03.07

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2023.12.20

漆の研究でコーヒーを科学する。異色の共同研究から考える、これか…

3

2023.09.12

【徹底討論】大人をしあわせにする、“学び続ける力”と“学び続けられ…

4

2023.12.25

【QuizKnock須貝さんと学ぶ】「愛ある金融」で社会が変わる、もっと…

5

2023.09.27

百聞は“一食”にしかず!藤森慎吾さんが衝撃体験した味覚メディアの…

連載記事