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モノ言う株主の台頭 ―会社法改正で変わる企業統治―

河内 隆史 河内 隆史 明治大学 名誉教授(元専門職大学院 法務研究科教授)

求められる取引所の国際競争力

河内隆史教授 改正法案では、「企業統治のあり方」という柱に加え、「親子会社に関する規律」がもう一方の柱にあるが、それは他の機会に譲るとして、私が注目しているテーマの一つである「総合取引所」についても言及してみたい。
取引所の一つであるわが国の証券取引所は、かつてはニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融の重要なポジションを占めていたが、その弱体化は著しい。コストパフォーマンスに優れ、弾力的な運用を可能とする魅力的な取引所に進化することは喫緊の課題である。取引所には、農産物等を扱う商品取引所もある。あるべき姿は、EUのように証券と商品が一つになった総合取引所となることだ。いわば、市場の百貨店化であり、取引所の国際競争力を高めていくためには必須なことと考えている。取引所の国際競争力が強化されることは、海外から資金を呼び込めることにつながり、日本経済の再生に大きなインパクトをもたらすだろう。会社法改正で見た企業統治の実効性を確保することも、わが国の取引所を魅力的な市場に進化させることも、いずれも投資家の信頼獲得に結び付くものだ。それは取りも直さず、世界からの日本への信頼に直結している。
最後に付言しておきたいのは、“規制緩和”についてである。企業活動の活性化のために規制緩和は必要だが、緩和すべき規制と強化すべき規制があることを留意すべきである。規制の意味を吟味し見極めた上で、緩和にせよ強化にせよ、適切なルール作りが必要であろう。

※掲載内容は2014年5月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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