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モノ言う株主の台頭 ―会社法改正で変わる企業統治―

河内 隆史 河内 隆史 明治大学 名誉教授(元専門職大学院 法務研究科教授)

株式会社の実質オーナーは株主

 改正法案では、資金調達の場面における企業統治のあり方でも見直しを行っている。従来、たとえば買収防衛の伝統的手法として第三者割当による新株発行が行われてきた。株式の分母を大きくし、分子のうちの味方の株主の株式数を増やすことで、相手方株主の支配比率の希釈化が可能となるからだ。これは現行法では、取締役会決議があれば行うことができた。しかし、経営陣の恣意的判断で株主構成や支配権の所在が決定できることになり、株主保護の観点から規制すべきとの意見が多い。他方、第三者割当は資金調達の有力な手段であり、規制されれば迅速な資金調達ができなくなるおそれがある。支配権維持か資金調達か。問題は、支配株主の異動を伴う第三者割り当てによる新株発行に、どのようなルールを設けるかということだ。
改正法案のポイントは2点ある。第三者割当によって過半数の株式を有することとなる場合、その引受人に関する情報を開示することであり、もう一つが、株主の10分の1以上が引受に反対した場合、株主総会の決議による承認を受けなければならないとしている。これは、株主の意見を反映させるという考えから生まれたものだ。株式会社の実質オーナーは株主である。従来のように、取締役会決議によって雇われている人(経営陣)が株主を選ぶということは、いびつな構造だった。改正法案は資金調達における企業統治のあり方が前進したものとして、評価されるべきである。

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