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ネットの店舗化、店舗のメディア化が始まっている

菊池 一夫 菊池 一夫 明治大学 商学部 教授

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いま、ネット通販などのEC市場が急激に伸びています。一方で、通販に不安を感じる人も多いと言います。そのため、実店舗がなくなることはないという考え方もありますが、実店舗が存在意義をもち続けるには、ネット時代に対応する変化も必要だと言います。

実店舗の強みは人の五感に訴える体験

菊池 一夫 経済産業省の調査によると、日本国内のB to Cの市場規模は2019年で約19兆3600億円で、EC化率は6.76%です。アメリカでのEC化率は約10%、中国では約35%と比較すると低いのですが、2020年のコロナ禍で、日本でもECは急速に伸びています。

 いわゆる巣ごもりが推奨され、買い物に行く機会が減ったためと考えられますが、ECの進展の傾向はコロナ以前からあり、それがコロナ禍で急激に顕在化したと言えると思います。

 一方で、インターネット通販に対して不安を抱く人が多いのも事実です。知覚リスクといわれるもので、通販の商品はサイズが合わないのではないか、モニターで見る色と違うのではないか、期待した性能と違うのではないか、といった不安です。

 通販会社は、AIをはじめ様々な情報技術を用いて、顧客の不安を払拭するように努めていますが、完全に払拭するのは難しいのです。

 例えば、ファッションであれば、顧客は、店舗で実物を手に取ったり、試着したり、店員のアドバイスなどを聞くことによって、納得して商品を絞り込みます。

 その意味では、ECが進展しても実店舗のニーズや存在意義は失われないのではないかと思えますが、これまでの店舗の在り方では容易ではないと言えるのです。

 ネット通販は、顧客がより利用しやすくなるように、技術的な面だけでなく、様々な工夫を行っているからです。

 例えば、ファッションブランドやデザイナーのサイトに掲載されたアイテムやそれを身につけたモデルの写真を見て、それをタップすると、購入サイトに飛ぶシステムがあります。

 そのサイトを訪れる人は、そもそも、そのブランドのファンであることが多いため、知覚リスクは希薄で、気に入ったアイテムがあれば、すぐに購入できるシステムの方が便利なのです。

 こういった顧客が増えれば、実店舗を訪れる人は減っていくでしょう。つまり、実店舗も、今後、存在意義を失わないために、ただ商品を陳列するだけでなく、新しい工夫が絶対に必要なのです。

 では、どのような工夫が考えられるのか。キーワードは、「体験」であると思います。

 例えば、ネットの強みは視覚と聴覚に訴えることです。商品をアップにして見せたり、360度の角度から見せることをはじめ、その商品がある状態をバーチャルで見せることもできます。音も、同じように様々に加工して聞かせることができます。

 ユーザーは視覚と聴覚によって、その商品のバーチャルリアリティを感じることができるわけです。

 ところが、ネットでは、触ったり、匂いを嗅いだり、味わう感覚を提供することはできません。逆に言えば、実店舗ではそれが可能です。商品に触れて質感を実感してもらったり、例えば、香水メーカーであれば、香りを確かめてもらったり、食品メーカーは商品を試食してもらうことができます。

 こうした五感に訴える体験を提供できることが、実店舗の強みになるのです。

 バーチャルリアリティの技術が進歩する程、逆に、人は自分の五感でリアルに体感することに感動するのではないかと思います。

 ネット時代であってもリアルの音楽フェスなどが盛況であるのは、音楽を聴くだけでなく、そこに集った人たちの熱気や雰囲気、風や空気、そこで飲んだ飲み物の味わいなどが、自分が生きていることを実感させるような感覚をもたらすからではないでしょうか。

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