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ネットの店舗化、店舗のメディア化が始まっている

菊池 一夫 菊池 一夫 明治大学 商学部 教授

顧客と店舗の「おたがいさま」が持続化に繋がる

 今後は、消費者と直接コンタクトをもつことを推進するメーカーや企業が増えるはずです。それは、ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)と言われる戦略で、ネット通販はもちろん、期間限定の店舗であるポップアップ・ストアを使った展開などが増えると考えられます。

 そこでは、商品の販売目的以上に、先に述べたような五感を刺激するエンターテインメント性の高い体験や、知識や好奇心を高める楽しい体験を提供するイベントなどが増えると思います。

 すなわち、消費者に、ネットでは得られないような様々な実体験の提供を通して集客を目指し、自社のファンづくりや組織化、顧客情報の集積を進めるのです。ポップアップ・ストアという店舗は、そのための場として機能するわけです。

 実際、すでに都内の百貨店などは、テナントスペースを集客目的のポップアップ・ストアやショールーム店舗として貸し出し、ショッピング・センター化する動きが始まっています。

 消費者側からすると、楽しいイベントが体験できたり、好みのブランドのデザイナーに会えたり、アンバサダーや専門家の話を聞けるなど、店舗を通して、様々な体験ができる機会が増えると思います。

 こうした体験は非常に楽しく、有益なものになっていくと思いますが、一方で、顧客は王様で、店舗は王様のためになんでもしてくれるところ、という思い込みは捨てるべきです。

 日本は少子高齢化のトレンドにあります。つまり、今後、様々な分野で人手不足が進みます。すると、顧客に無理強いされるような小売業は進んでやりたい仕事とはみなされなくなり、店舗の人手不足に拍車をかけることになりかねません。

 すでに、高度経済成長期に繁栄した郊外の町などでは、シャッター商店街化が進んでいます。消費者が地元の商店より、進出してきた大型ショッピング・センターで買い物をするようになったからです。

 でも、そのショッピング・センターも郊外の人口減少にともなって撤退するようになってきています。町に残された人たちは日々の買い物をどこですれば良いのでしょう。

 日本には「おたがいさま」という言葉があります。相手の立場も考えて行動しましょう、ということです。すると、お互いの関係が持続するようになるのです。同じことが店舗と顧客にもあると思います。

 店舗が消費者の立場からいろいろな工夫を考えているように、消費者も店舗の立場を考えた消費行動をとることによって、お互いにとって有益になり、その関係は持続化するのです。それが、消費者の賢い知恵なのではないかと思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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