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2020.11.25

エビデンスに基づく取り組みは、自然相手の農業にも重要

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データ分析と現場を両立させることが重要

 日本人は、数値化したデータを基にエビデンスをとり、物事を評価するという作業が、あまり得意ではないように思います。

 例えば、現状を変える新しい取り組みを始めなくてはならないとき、それまでの取り組みをデータによって分析したり、場合によっては、新しい取り組み案についてデータをとり、結果の因果関係を精査する作業を行うことは、農業分野に限らず、他の産業分野やビジネスの世界などでも少ないのではないでしょうか。

 むしろ、成功している先行事例に頼り、それを厳密に評価することなく取り入れることが多いと思います。

 もちろん、特に、ビジネスの世界では時間的な余裕がないことが多く、短期的に結果を出すためには、そうしたやり方も致し方ないとは思います。

 しかし、情報技術の分野は飛躍的に発展しており、ビッグデータの分析も容易になってきています。

 例えば、担当者の勘や経験則も、実は、それに即した提案においては重要なのですが、組織やステークホルダーが複雑化している現代では、それだけでは周囲を納得させることは難しいと思います。

 やはり、情報技術や計量経済分析などを用いてデータを分析し、エビデンスに基づく立案を行うことが効果的であり、周囲の納得も得られやすいと思います。

 また、短期的な結果ばかりにとらわれていると、長期的な課題をなおざりにすることになりかねません。

 例えば、農業分野でも、環境問題や気候変動は重要な問題です。それでも、喫緊の課題やいまの問題に目がいきがちで、長期的な問題である環境問題には関心が薄いのです。

 しかし、気候変動によって、いままでよく育っていた作物の生育が悪くなったり、異常気象による自然災害で被害を受ける農家も多くなっています。

 長期的な課題に対する解決策は、いますぐと言われて出せるものではありませんが、やはり、データを積み重ね、エビデンスをとることでより有効な方法が見えてくると思います。それは、ビジネスの世界でも同じではないでしょうか。

 数値化やデータ分析は、いままで捉えにくかった問題を見える化して、その解決策を考えやすくする方法だと思います。それが根底にあるEBPMは、世界の潮流でもあり、日本も積極的に取り入れていかなくてはならない取り組みであることは間違いありません。

 しかし、データだけではわからないこと、捉えられないこともあります。

 農村現場での観察や調査によって、数値では捉えられないことを把握することも大切です。どちらかが欠けると走れなくなる車の両輪のようなもので、現場の調査・観察とデータ分析を両立させることが重要なのです。

 EBPMにおいても、この両立は大切だと思います。また、ビジネスなどの世界でも、こうした考え方は必要なのではないでしょうか。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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